2015 Fiscal Year Research-status Report
腎臓ネフロン前駆細胞の維持機構解明による自己複製法の確立
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26860640
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
谷川 俊祐 熊本大学, 学内共同利用施設等, 助教 (10726318)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ネフロン前駆細胞 / Six2 / LIF / 糸球体 / 尿細管 |
Outline of Annual Research Achievements |
人体の主要臓器である腎臓は再生しないが発生期には腎臓を造り上げる前駆細胞集団が存在している。しかし、それらはネフロンを構成する細胞へと分化し生後には消失する。このことが腎臓が再生できない理由の一つと考えられる。本計画は、ラットのネフロン前駆細胞初代培養法を改善し、マウスのネフロン前駆細胞の培養に適用することで動物種を越えた自己複製法を確立することを目的とする。平成26年度は、LIFおよびROCK阻害剤Y27632を組み合わせた条件によって未分化状態を維持したままラットのネフロン前駆細胞を増幅できることを見いだした。さらに増幅した細胞は糸球体と尿細管からなるネフロンの3次元構造を再構成した。このネフロン前駆細胞の増幅および分化能維持にはLIFの濃度が極めて重要であり、高濃度のLIF(10-50 ng/ml)ではPLC-gamma経路およびJNK経路といった分化促進経路を活性化する。一方、低濃度のLIF(1 ng/ml)とY27632の組み合わせはこれらの経路を抑制することが分かった。さらにこの培養条件は、増殖と分化に重要な役割を持つYapの核内移行を促進することによって未分化状態の維持に働くことが分かった。しかし、この培養条件はマウスのネフロン前駆細胞には適用できなかった。平成27年度は、ネフロン前駆細胞に発現する転写因子Six2のプロモーター制御下にGFPを導入したマウスを利用し、最適な培養条件を検索した。その結果、LIFに加え腎臓が分化する際に必要な液性因子WNT及びBMPを敢えて低い濃度で培養液に添加することにより、マウスのネフロン前駆細胞を試験管内で約20日間培養し、約1,800倍に増幅することに成功した。増幅した細胞は糸球体と尿細管を形成する能力を維持していた。今後はこの培養法がマウスES細胞およびヒトiPS細胞から誘導したネフロン前駆細胞の増幅に適用できるか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請計画に沿って、一年目に、ラットのネフロン前駆細胞の初代培養法の改良によって尿細管や糸球体に分化する能力を維持しながら増幅できるようになった。しかしその方法はそのままマウスのネフロン前駆細胞の培養に適用することはできなかったが、LIFに加えWNT及びBMPを低濃度で処理することにより糸球体と尿細管を形成する能力を保ったまま、in vitroで19日間、1800倍に増幅することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスネフロン前駆細胞の培養法がマウスES細胞およびヒトiPS細胞から誘導したネフロン前駆細胞の増幅に適用できるか検討する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に実施計画であったマウスネフロン前駆細胞の研究成果を論文に投稿し、リバイスとなった。多数の追加実験が必要となり、マイクロアレイなど高額の実験が必要となった。平成27年度末も本研究を継続中であり、翌年度に延長する必要があるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスネフロン前駆細胞の培養法がマウスES細胞およびヒトiPS細胞から誘導したネフロン前駆細胞の増幅に適用できるかの検討に必要な物品費用に使用する。
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Research Products
(11 results)