2014 Fiscal Year Research-status Report
腎筋連関のエピゲノム解析とホルモンを用いた最適治療によるCKD患者の身体能力改善
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26860644
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田蒔 昌憲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90528902)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グレリン / 身体能力 / 慢性腎臓病 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)患者の身体能力は発症初期から低下する。申請者らはCKDにおける骨格筋退行性変化である”腎筋連関”に着目し、これまでに軽度CKDモデルである5/6腎摘マウスにおいて、骨格筋ミトコンドリア減少を伴う持久力低下が骨格筋量減少および筋力低下に先行することを見出した。最近、消化管ホルモングレリンがCKDモデルマウス骨格筋の酸素利用を促進することが報告されたので、本研究ではグレリン投与による5/6腎摘マウスの身体能力改善を試みた。 5/6腎摘後の若齢C57Bl/6マウスに、グレリンを腹腔内投与し、1か月後に筋力、持久力、骨格筋量、ミトコンドリア機能、ミトコンドリア生合成の鍵分子PGC-1αとその関連分子の発現を検討した。また、培養骨格筋細胞C2C12にグレリンを投与し、ミトコンドリアエネルギー代謝への影響を検討した。骨格筋量増加因子IGF-1投与群においても同様の検討を行った。 若齢5/6腎摘マウスの骨格筋量と筋力は低下しなかったが、骨格筋PGC-1α遺伝子発現とミトコンドリアは減少し、持久力も低下した。グレリンは5/6腎摘マウスの筋量と筋力のみならず、PGC-1α遺伝子発現とミトコンドリアを増加し、持久力を改善した。さらにグレリンはPGC-1αを介してC2C12のミトコンドリア量と酸素消費量を増加した。一方、IGF-1は筋量を増加したが、PGC-1α遺伝子発現とミトコンドリアを増加せず、持久力の改善もわずかであった。 若齢5/6腎摘マウスでは骨格筋ミトコンドリア減少を伴い持久力が低下したが、グレリンはPGC-1αを介して骨格筋ミトコンドリアを増加し、持久力を改善した。IGF-1は骨格筋量にのみ作用し、ミトコンドリアに作用しなかった。これらの知見は腎筋連関の機序を示しており、骨格筋ミトコンドリアがCKDにおける身体能力低下の治療標的となることを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CKDにおける骨格筋退行および身体能力低下の特徴的な変化である、ミトコンドリア減少を伴う持久力低下を、グレリンはPGC-1α遺伝子発現の増加を介して改善することを見出した。さらに、IGF-1を用いた検討では、骨格筋量は増加するものの骨格筋ミトコンドリア量は変化せず、骨格筋量のみへの作用ではCKDの骨格筋退行および身体能力低下を改善しないことを見出した。これらの知見によって、CKDにおける身体能力低下の最適治療を実現するためにはミトコンドリアへの作用が重要であり、グレリンはその治療薬のひとつとなりうる可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた知見をもとに、5/6腎摘マウスにおけるPGC-1α発現低下の低下メカニズムをエピゲノムの観点から検討する。具体的には、PGC-1α遺伝子発現を低下させることが知られている、プロモーター領域における特定のシトシン(C-260)メチル化を、Methylation Specific PCR (MSP)法およびBisulfite Genomic Sequence (BGS)法を用いて検討する。
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