2015 Fiscal Year Research-status Report
睡眠-覚醒リズムの異常が神経変性疾患の病態を修飾する機構の探索的研究
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26860681
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
皆川 栄子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第四部, 科研費研究員 (20726252)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / 睡眠障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠障害は、神経変性疾患の中でも頻度の高いアルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症などに共通して疾患早期から出現する症状である。この睡眠障害は、従来、睡眠-覚醒の制御をつかさどる脳部位に神経変性がおよんだ結果として出現すると考えられてきた。一方で近年、従来の理解とは逆に、「睡眠障害が神経変性を増悪させる」という仮説を示唆する知見が散見されるが、その詳細な機構は未だ明らかではない。 本研究ではこの仮説を検証するとともに、その機構を明らかにすることをめざす。2015年度は、2014年度に導入した新たな睡眠障害誘導装置を用いて、神経変性疾患モデルマウスの脳病態の変化について病理学的解析を行った。この睡眠障害誘導装置内で、2014年度に最適化した実験条件にもとづいて疾患モデルマウスを飼育した結果、神経変性疾患の患者に類似したパターンの慢性的な睡眠障害を誘導することができた。また、通常の条件で飼育した疾患モデルマウスと慢性的な睡眠障害を誘導した疾患モデルマウスとを用いて病理学的解析を行った結果、モデルマウス脳で観察される疾患特異的な病理学的所見が悪化することを明らかにした。 本研究は、従来の研究で用いられてきた急性かつ重篤な睡眠障害(断眠)ではなく、患者類似の慢性的な軽度の睡眠障害が神経変性疾患の脳病理に与える影響を評価している点が特徴的である。上記の結果は、慢性的な睡眠障害により神経変性疾患の脳病理が変化しうることを示唆する重要な知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、2014年度に起ち上げた睡眠障害誘導実験系ならびに最適化した実験条件にもとづいて、神経変性疾患モデルマウスに睡眠障害を誘導して研究を進めた。その結果、本研究の目的である「睡眠障害が神経変性を増悪させる」という仮説を検証するプロセスにおいて中核となる結果を得ることができたことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
睡眠障害が神経変性を増悪させる機構を明らかにすることをめざし、本年度と同じ神経変性疾患モデルマウスを用いて病理所見の変化の背景にある分子生物学的・生化学的変化を解析するとともに、疾患特異性の有無を明らかにすることをめざし、本年度とは異なる神経変性疾患モデルマウスを用いて睡眠障害による病理所見の変化についても検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に進行しているが、実験計画の一部について実施する順序を入れ替えたことから、本年度に外注費用として計上していた「その他」の経費を中心に次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、従前の研究計画の内容に加えて、前記の外注費を利用した解析を行う予定である。
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Research Products
(1 results)