2015 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病患者における重症低血糖が及ぼす臨床的影響
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26860701
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
辻本 哲郎 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (60721743)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 重症低血糖 / β遮断薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症低血糖はけいれん、意識障害、脳神経障害につながる危険な状態である。さらに最近の研究では重症低血糖が心血管疾患の発症や死亡率の上昇と関連することが示されている。その原因については、重症低血糖による交感神経系の亢進や活性化が一因と考えられている。重症低血糖時には重症高血圧や低カリウム血症を高率に伴うことが知られている。最近の基礎研究においてβ遮断薬使用により重症低血糖時の著明な血圧上昇や低カリウム血症を防げる可能性が示唆されている。今回の研究目的は重症低血糖患者を対象にβ遮断薬の有効性を調査することであり、下記の結果をMedicine (Baltimore). 2015 Sep;94(39):e1629.(IF 5.7) に報告した。 対象は当院に救急搬送された59602症例のうち糖尿病患者352症例であった。重症低血糖時の重症高血圧(≥180/110 mmHg)は、1型糖尿病群(n = 61) 21.3%、2型糖尿病群(n = 291) 38.8%であった(P = 0.009)。既存高血圧のある患者でそれぞれ40.0%、40.7%と高率に重症高血圧を認め有意差はなかったが、β遮断薬使用の有無で2群に分けると重症高血圧発症は20.7%、42.6%とβ遮断薬使用者で有意に低かった(P = 0.02)。多変量解析の結果でもβ遮断薬使用は重症低血糖時の重症高血圧発症と負の関連を示した(P = 0.02)。また、β遮断薬使用者に低K血症は認めなかった。β遮断薬を服用している糖尿病患者は重症低血糖時にその悪影響が出現しにくい可能性が示唆された。 本研究は糖尿病治療に大きく貢献すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究結果をpeer review systemのあるジャーナルに投稿し、アクセプトされており、研究は順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
β遮断薬を内服している糖尿病患者においては重症低血糖の悪影響が出にくい可能性はあるが、β遮断薬の使用そのものが低血糖リスクを上昇させる可能性がある。近年の糖尿病治療においてβ遮断薬の使用が心血管イベントの発症にどの程度影響を与えるかさらに研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は作成したデータベースを用いた解析と論文作成が中心となったことから物品費や人件費、旅費の支出が少なくなったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究自体は順調に進んでおり、必要に応じて計画通り物品費や人件費を使用し、今後も多くの学会発表、論文化を進めていく。
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Research Products
(5 results)