2014 Fiscal Year Research-status Report
肥満の過食機構の解明―脳内報酬系マイクログリア活性化と神経細胞可塑的変化の役割
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26860712
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 伸子 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (50400891)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肥満症 / 減量治療 / 報酬系 / 炎症 / マイクログリア / Foxo1 / ドーパミン神経系 / 過食 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満症では中脳辺縁ドーパミン神経系を中心とする報酬系の破綻により食べ物の意義づけが正常を逸脱している可能性がある。肥満病態では慢性炎症が全身で認められ、肥満動物モデル視床下部ではマイクログリア増殖やグリオーシスなどの炎症性変化が認められる。マイクログリアは中枢神経系の免疫担当細胞であり、血中由来因子や神経変性に反応して活性化され神経活動に影響を及ぼす。近年、多くの中枢神経疾患においてマイクログリア-神経細胞の相互作用に基づく神経炎症の役割が注目されている。この神経炎症は中枢神経系ネットワークの可塑的変化による機能障害に繋がると考えられているが、肥満病態における役割は明らかにされていない。本研究では肥満病態に寄与する高嗜好性の食べ物が、どのように報酬系のマイクログリア活性に影響を及ぼすかを明らかにすることで肥満症治療の新たな戦略を見出す。そこで、高嗜好性の食べ物である高脂肪食を16週間負荷したC57BL6J♂マウス脳のmRNA発現解析およびCD68陽性細胞解析を行ったところ、海馬のIba-1 mRNAおよびCD68 mRNAの上昇と、側坐核CD68陽性細胞数の増加が認められ、高脂肪食負荷による脳内マイクログリアの活性化が確認出来た。このマウス脳mRNAのマイクロアレイによるpathway解析も行っている。また、マイクログリア活性化阻害薬ミノマイシン経口投与による高脂肪食の報酬効果の変化について検討を行っている。さらに、細胞内インスリンシグナルの下流で制御される転写因子Foxo1 は側坐核でdopamine transporter (DAT)と共局在し、絶食‐再摂食により発現量が変化する。そこで、Foxo1 の報酬系における役割を解明する目的でDAT-Cre マウス(福島県立医科大学小林和人教授より)によりドーパミン神経細胞特異的Foxo1 欠損マウスを作製している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥満症関連モデルマウスの作製およびDAT-Creマウスの入手、Foxoトリプルfloxマウス作製は概ね終了している。肥満症関連モデルマウスのマイクログリア活性化評価をタイムコースと共にmRNAレベル (qRT-PCR法)およびタンパク質レベル(免疫組織化学法)で行っている。その結果、高脂肪食負荷によりCD68やF4/80 などのマイクログリアの活性化を示すマーカー類の増加が確認出来ている。同時にpro-inflammatory cytokinesの上昇も確認出来ている。2週間の高脂肪食負荷では、これらのマーカーおよびpro-inflammatory cytokinesの挙動が正常食と異なる動きを示すという結果を得ている。さらに、マイクロアレイによりpathway解析を行っている。これにより本病態で重要となるターゲット遺伝子を同定する。また、マイクログリアに対する治療的介入の解析目的で肥満症関連モデルマウスに対するミノマイシン経口投与も行っている。ミノマイシン経口投与によりマイクログリア活性化抑制効果が十分得られない場合には、腹腔内投与の系に変更予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
肥満病態でのマイクログリアの活性化を確認出来たので、高次中枢神経系の機能変化との関連を解析する。具体的には、条件づけ場所嗜好性試験とNaloxone-precipitated withdrawal jumpingにより、高脂肪食の報酬効果および離脱について検討する。さらに、臨床上、肥満症と薬物依存との類似性が指摘されていることから、薬物依存に関与すると考えられているドーパミン/オピオイド/グルタミン酸神経系のアゴニスト・アンタゴニスト・阻害薬への肥満関連病態モデルマウスにおける反応性を評価することで、薬物依存と過食メカニズムの共通基盤を明らかにする。これらの結果を踏まえ、高脂肪食の主な脂肪成分であるパルミチン酸などの飽和脂肪酸の作用を初代培養マイクログリアを用いて検討する。また、側坐核における肥満の発症過程あるいは肥満改善後も残存することが予想されるターゲット遺伝子のエピゲノム変化およびAdeno-associated virus (AAV)ベクターによる部位特異的・時間特異的遺伝子導入による報酬効果の変化を解析する。これらの解析により高次中枢神経系の特定の神経核でのマイクログリアの役割を明らかにし、肥満の過食につながる報酬系破綻メカニズムを明らかにし、その治療法の開発を目指す。
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Research Products
(18 results)