2014 Fiscal Year Research-status Report
新たな血栓症の予防・治療法確立を目指した巨核球造血・血小板機能における系統的解析
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26860718
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上妻 行則 筑波大学, 医学医療系, 助教 (90550145)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血小板 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者のこれまでの予備的検討及び研究成果から、血小板機能にcalpain-calpastatin 系が関与する可能性が示唆された。そこで、calpain の内在性阻害タンパクであるcalpastatin ノックアウト(KO) マウスを用いて血小板機能におけるcalpastatin の役割を検討した。野生型(WT)血小板にcalpain 阻害剤(calpeptin)を添加し、血小板機能(PS exposure、CD62P(P-selectin)、活性化 GPIIbIIIa、microparticle 放出能など)を検討した結果、MP 放出量及び血小板凝集能はcalpeptin 添加により有意に低下したものの、PS exposure、CD62P、活性化 GP IIbIIIa 陽性血小板の割合は阻害剤添加で有意に増加した。次にKO マウスを用いて検討したところ、microparticle 放出量及び活性化 GPIIbIIIa陽性率が calpastatin KO マウスで有意に高値であった。一方、PS exposure 及び出血時間はWTとKO 血小板で有意な差は認められなかった。さらに、CD62P 陽性血小板の割合は KO で有意に増加したものの、mean fluorescence intensity は KO で有意に低値であった。また血小板活性化に伴うcalpain活性化を western blot で検出したところ、m-calpain は血小板活性化前後で変化は認められなかったものの、u-calpain は継時的に活性化された。以上の結果から、calpastatin は血小板活性化を負に制御する分子である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来、平成26年度は、CD226 の血小板機能及び巨核球造血における役割を明らかにするために、CD226 KO マウスを用いた検討を行う予定であった。しかしながら、CD226 KO マウスの繁殖効率が悪く、研究を遂行するには不十分なマウスしか準備できなかった。そこで、該当年は CD226 KO マウスを用いた血小板機能及び巨核球造血に関する解析を行わず、CD226 KO マウスの繁殖を中心に行った。従って、平成26年度は、検討するマウスは当初とは異なるものの、研究計画では平成27年度以降に行う研究対象であり、かつ繁殖が順調で研究に十分なマウスが確保できた別の KO マウス(血小板機能における calpain-calpastatin 系の役割を検討するために導入した calpastatin KO マウス)の解析を先に行うこととした。その結果、calpastatin KO マウスとWT マウスで活性化 GPIIbIIIa 陽性率や microparticle 放出量、CD62P の発現など血小板機能に差が認められる血小板活性化マーカーが明らかとなってきた。しかしながら、いかにしてそのような差が認められるのか、その原因や血小板内情報伝達系の詳しい解析まで行うことはできなかった。そこで、現在も calpastatin KO マウス血小板を用いて血小板内情報伝達系を中心に解析を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
血小板機能における calpain-calpastatin 系の役割を明らかにするためには、calpastatin KO マウスのさらなる解析が必要である。なかでも、血小板活性化に伴う calpain 及び calpain 関連タンパクの細胞内動態は、calpain-calpastatin 系の血小板機能への関与を証明するには必須である。従って、免疫沈降及び western blot を主たる研究手法として血小板細胞情報伝達系の解析を行う予定である。さらに、平成27 年度は、平成26年度に研究を行うことが出来なかったが、順調に繁殖した CD226 KO マウスを用いて血小板機能及び巨核球造血における CD226 の役割の検討を行う予定である。特に骨髄内における巨核球造血の場を提供する骨髄 stromal 細胞と巨核球の相互関係を western blot や flow cytometry などの手法を用いて解析を行う。CD226 の血小板機能については、止血の中心となる血管内皮細胞と血小板の接着などに焦点を当て、接着に伴い作動する細胞内情報伝達系や各種血小板活性化マーカー、血小板そのものの形態学的な変化などを検討する予定である。また、申請者のこれまでの予備的検討及び研究成果から巨核球造血に関与することが示唆されている p38 MAPK についても p38a KO マウスを用いて検討を行う予定である。
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