2015 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞技術を用いて再生した抗原特異的T細胞の安全性と有効性の検証
Project/Area Number |
26860728
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 喬子 京都大学, 再生医科学研究所, 助教 (40565777)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 血液腫瘍学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に、LMP2抗原特異的細胞障害性T細胞(Cytotoxic T Lymphocyte; CTL)から樹立したLMP2-T-iPS細胞について、テラトーマ形成能を確認し、iPS細胞の多能性を確認した。このT-iPS細胞から分化誘導したT細胞が、LMP2ペプチド存在下で標的細胞に対して細胞傷害活性を有することは平成26年度までに確認していた。しかし、このとき誘導されていたのはCD8αα型T細胞であり、細胞傷害能はNK細胞様の活性によるものが大きいことが分かった。そこで分化誘導系に改良を加え、CD8αβ型T細胞を誘導することに成功した。新規開発した方法で得られたCD8αβ型T細胞は、in vitroにおいて標的細胞に対してペプチド存在下で元のCTLと同等の細胞傷害活性を示した。また、抗HLA抗体で処理することで、細胞傷害活性が示されなくなったことから、再生したCD8αβ型T細胞はT細胞レセプターによって抗原を認識し、細胞傷害活性を示しているといえる。また、その他の標的抗原として、種々の腫瘍細胞に多く発現していることが知られているWT-1(Wilms Tumor-1)抗原でも同様の実験を行った。すなわち、健常ボランティア末梢血よりWT-1抗原特異的キラーT細胞を得、WT1-T-iPS細胞を樹立した。さらにこのiPS細胞からWT-1抗原特異的キラーT細胞を再生した。得られた再生T細胞を用い、in vivoでの細胞傷害活性能を検証した。NOGマウスにWT-1を発現する白血病細胞株を腹腔内投与し、1日後から再生したキラーT細胞を週に1度、腹腔内投与した。すると、キラーT細胞投与群(治療群)で延命効果が見られた。治療群の多くのマウスの末梢血中にはキラーT細胞が検出されていたが、長期間の観察においてもそれらの細胞が腫瘍化することはなかった。また、WT-1陽性白血病患者検体を標的細胞として用いた実験においても、細胞傷害活性が確認された。
|