2014 Fiscal Year Research-status Report
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26860742
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
島 豊 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, 研究員 (90572298)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | leukemia / NUP98 |
Outline of Annual Research Achievements |
NUP98融合遺伝子の関与する白血病(NUP98白血病)は予後不良である。NUP98白血病細胞において、脂肪酸合成酵素FASNがNUP98融合タンパク質と結合すること、またFASN阻害剤がNUP98白血病細胞に選択的に有効であることを私は既に見いだしていた。 当該年度期間中は、上記選択性の理由について検討を行った。まずNUP98-HOXA9を始めとする白血病で見られる各種融合遺伝子をマウス骨髄細胞に導入して白血病化させ、これらの細胞内の代謝産物について網羅的に解析を行った。様々な代謝産物を同定できたが、NUP98白血病細胞で特異的に変化している代謝産物は得られなかった。しかし、精製したNUP98-HOXA9とFASNを用いて、脂質合成に与えるNUP98-HOXA9の影響についてin vitroの系で検討した結果、NUP98-HOXA9はFASNの活性を低下させることが明らかとなった。この結果は、NUP98白血病細胞において、NUP98融合タンパク質はFASNと結合し、その活性を負に制御することで、脂質合成を抑制していることを示唆している。一方でFASNは細胞の恒常性には必須な分子である。従って、NUP98白血病細胞ではFASNの活性が低いが必須であるために、FASN阻害剤が低用量で選択的にNUP98白血病細胞に有効であったと考えられる。 本研究から今までに固形腫瘍等で脂肪酸合成について得られた知見とは異なる全く新しい結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、NUP98白血病細胞およびその他白血病細胞や正常細胞における代謝産物について網羅的に解析を行った。残念ながら有意な結果は得られなかったが、in vitroの実験からNUP98白血病細胞では脂肪酸合成が低く抑制されており、そのことがFASN阻害剤がNUP98白血病細胞に選択性がある理由と示唆された。また今年度予定していたマウスを用いたin vivoのFASN阻害実験については、現在様々な条件を振り、進行中である。従って、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度期間中に行った代謝産物の網羅的な解析では、技術的に中性に近いすなわち脂質系の代謝産物は測定することが難しく、検出することができなかった。平成27年度はパルミチン酸等脂質に絞って、NUP98白血病細胞とその他白血病細胞や正常細胞で脂質産生に差があるかどうか検討する。また、引き続きマウスを用いたin vivoの実験でFASN阻害剤がNUP98白血病に有効であるかどうかの検討を行う。さらに、Fasn conditional knockoutマウスを用いて、Fasn遺伝子をノックアウトしたとき白血病が維持されるかどうを検討し、NUP98白血病におけるFASNの役割を分子レベルで解明する。
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Causes of Carryover |
物品の価格変更等で計画通りの金額とはならなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品費として使用する。
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