2014 Fiscal Year Research-status Report
環境因子によるアレルギー・マーチモデル発症機序の解析と先制介入治療標的の探索
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26860759
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
上條 清嗣 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00445470)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アレルギー・マーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国で重要なアレルゲンであるダニアレルゲンと同じプロテアーゼアレルゲンのファミリーに属するパパインを用いて、①皮下注射による皮膚炎症モデル②点鼻投与による気道炎症モデル③皮下注射モデル発症後に点鼻投与を行うことで気道炎症への感受性が上昇するアレルギー・マーチモデルについて解析を行っている。 本研究課題着手の時点で代表者らはin vitro においてパパインのプロテアーゼ活性が好塩基球に作用してIL-4 等のアレルギー疾患に重要なサイトカインを誘導すること、パパイン吸入モデルでは好塩基球の関与がみられないこと、パパイン皮下注射モデルでは抗体産生は好塩基球に依存するが皮膚炎症は依存しないことをつきとめていた。本研究課題着手後、アレルギー・マーチモデルへの好塩基球の貢献を検討したところ、好塩基球除去マウスではパパイン皮下注射後の抗体応答は低下するものの、その後のパパイン吸入による気道炎症には好塩基球除去による抑制は見られないことが明らかとなった(未発表データ)。 また、パパインによるアレルギー・マーチモデルでの気道炎症にはIL-33の貢献が見られたが、パパイン皮下注射による感作の段階はIL-33に依存しないことを明らかにした(投稿中データ)。この結果はパパイン曝露に対するアレルギー応答の機序は気道と皮膚で大きく異なる事を示しており、IL-33に代わり皮膚での応答で中心的役割を果たしている因子について現在解析中である。 現在はパパイン皮下注射モデルで解析を進めているが、将来はより実際の曝露に近いパパイン塗布モデルでの解析を計画している。すでに皮膚へのパパイン塗布によりパパインのプロテアーゼ活性に依存的に皮膚のバリア機能が低下し、血中のIgE、IgG1が上昇することを報告しており、塗布モデルにおける皮膚炎症やその後の気道炎症への感受性上昇についても実験結果を蓄積しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に掲げた平成26年度の検討項目(①皮膚感作なしのパパイン吸入モデルでの検討②アレルギー・マーチモデルへの好塩基球の貢献を検討③アレルギー・マーチモデルでのIL-33 依存的自然免疫応答の解析④より実際のアレルゲン曝露に近い条件でのアレルギー・マーチモデルの確立)の内、②および④については順調に一定の成果を挙げることができたと考えている。③については、気道炎症モデルでの重要性とは対称的に皮膚炎症モデルではIL-33の貢献が全く見られなかったこと、また、皮膚炎症モデルでは好塩基球の役割も抗体産生への部分的な貢献がみられただけであった(検討項目②について得られた結果)ことから、パパインによる皮膚炎症モデルは単一の因子・経路が決定的な役割を担っているのではなく、複数の因子・経路が協調的に、あるいは重複して作用して引き起こしているのではないかとの考えに基づいて、新たな視点からの検討を進めている。 検討項目①についての解析が当初の予定より遅れているため、「(3)やや遅れている」の自己評価を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
パパイン皮下注射による皮膚炎症発症後に、パパインを点鼻投与することで気道炎症を惹起するアレルギー・マーチモデルにおいて、計画当初に着目していた好塩基球の貢献がそれほど見られず、気道炎症モデルでは中心的役割を果たしているIL-33も皮膚炎症モデルではその貢献が見られなかった。そこで、パパインによる好塩基球の活性化と皮膚におけるIL-33産生を軸とした当初の計画とは別の視点から、パパインによる皮膚炎症モデル発症機序の再検討を進めている。 一方、より現実のアレルゲン曝露に近い条件であるパパイン塗布による皮膚炎症モデルについてはすでに多くの実験データが蓄積できており、今後は塗布モデル発症後に点鼻投与を行うアレルギー・マーチモデルでの解析を進める。 当初の計画より解析の遅れている「IL-33応答性IL-5,IL-13産生細胞の特定」については早急に解析に着手するとともに、その有望な候補細胞である2型自然リンパ球の単離・培養法を確立し、in vitro での解析が可能な態勢を整える。
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Causes of Carryover |
研究課題着手後に得られた実験結果から、申請当初の計画を変更する必要が生じ、それに伴って申請当初平成26年度に行う予定であった解析の一部が次年度に延期されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初平成26年度に予定していたが次年度に延期された実験・解析に必要な試薬、動物その他消耗品購入のための物品費として、また同実験・解析で得られた結果の発表に伴う旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Epicutaneous administration of papain induces IgE and IgG responses in a cysteine protease activity-dependent manner.2014
Author(s)
Iida H, Takai T, Hirasawa Y, Kamijo S, Shimura S, Ochi H, Nishioka I, Maruyama N, Ogawa H, Okumura K, Ikeda S.
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Journal Title
Allergol Int. 2014
Volume: 63
Pages: 219-226
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] TSLP expression induced via Toll-like receptor pathways in human keratinocytes.2014
Author(s)
Takai T, Chen X, Xie Y, Vu AT, Le TA, Kinoshita H, Kawasaki J, Kamijo S, Hara M, Ushio H, Baba T, Hiramatsu K, Ikeda S, Ogawa H, Okumura K.
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Journal Title
Methods Enzymol.
Volume: 535
Pages: 371-387
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Book] 医学の歩み2014
Author(s)
高井敏朗、上條清嗣
Total Pages
61 (1226-1232)
Publisher
医歯薬出版株式会社