2014 Fiscal Year Research-status Report
脂肪由来幹細胞の異所性石灰化におけるDNAメチル化異常の解析と新規治療法への応用
Project/Area Number |
26860763
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
福與 俊介 産業医科大学, 医学部, 助教 (00449943)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 脂肪由来間葉系幹細胞 / 骨芽細胞分化 / IL-6シグナル経路 / エピゲノム / TET1 / Oct3/4 |
Outline of Annual Research Achievements |
健常人脂肪由来間葉系幹細胞が骨芽細胞に分化する過程において、骨芽細胞分化誘導のみを行った場合と骨芽細胞分化誘導系に炎症性サイトカイン刺激(IL-6シグナル経路)を添加した場合のDNA methylationをRT-PCR法によるmRNAの発現レベルを比較した。骨芽細胞分化誘導で、DNMT(DNA methyltransferase)1、DNMT3b mRNAの発現レベルは刺激3日後をピークに上昇を認めたが、IL-6/sIL-6R刺激による影響は認めなかった。DNMT3a mRNAの発現レベルはいずれの場合でも変化は認めなかった。TET(ten-eleven translation)1、TET2、TET3 mRNAの発現レベルは、骨芽細胞分化誘導で刺激後8時間をピークに上昇が認められたが、IL-6/sIL-6R刺激によりTET1 mRNAの発現レベル上昇の抑制効果を認めた。次に、幹細胞のself-renewing markerであるNanog、Oct3/4遺伝子の転写制御を確認したところ、Nanog mRNAの発現レベルは骨芽細胞分化誘導系のみ、IL-6/sIL-6R刺激の両方で刺激後8時間をピークに抑制が認められたが、Oct3/4 mRNAの発現レベルはIL-6/sIL-6R刺激でのみ特異的に低下が認められた。これはTNFα刺激では認めなかった。既報では、TET1がDNMTと競合的に働きNanog遺伝子の転写制御を行うことが報告されており、以上の結果より、骨芽細胞分化誘導系では、Nanog遺伝子の抑制が誘導され骨芽細胞分化に誘導する可能性が示唆された。一方で、骨芽細胞分化誘導系においてIL-6/sIL-6R刺激は、TET1の発現抑制を誘導しOct3/4遺伝子の発現抑制を誘導することで、骨芽細胞分化促進作用を引き起こす可能性が示唆された。以上の結果を異所性石灰化患者の脂肪由来間葉系幹細胞と比較することで炎症性疾患における異所性石灰化治療のブレイクスルーを期待する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、健常人脂肪由来間葉系幹細胞を用いたin vitroでの解析を行ったが、脂肪由来間葉系幹細胞における骨芽細胞分化を誘導する炎症性サイトカイン(IL-6/TNFα)の作用メカニズム(細胞内シグナル・mRNA発現)、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞の正常な脂肪分化作用および骨芽細胞分化への異常な誘導作用のメカニズム(脂肪細胞分化・骨芽細胞分化マーカーのmRNA発現・細胞内シグナル・骨芽細胞分化におけるDNA methylationの解析および炎症性サイトカインによる影響について解明できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回の健常人脂肪由来間葉系幹細胞における骨芽細胞分化経路における炎症性サイトカインのDNA methylationへの影響についての結果をもとに、患者検体(血清・脂肪組織)を用いて、骨芽細胞分化促進因子あるいは抑制因子の破綻、脂肪分化促進因子の破綻について、DNA methylationを解析することで、炎症性疾患における異所性石灰化の病院解明を行う。
|