2014 Fiscal Year Research-status Report
デングウイルスエンベロープ蛋白質1st ドメインII領域の免疫原性に対する検討
Project/Area Number |
26860767
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Research Institution | 一般財団法人阪大微生物病研究会 |
Principal Investigator |
佐々木 正大 一般財団法人阪大微生物病研究会, その他部局等, 研究員 (20547533)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | デングウイルス / ワクチン / エンベロープ / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのデングワクチン開発のほとんどは、マウスへの免疫により重要とされたデングウイルスエンベロープ蛋白質のドメインⅢ領域を対象としたものある。しかしながら、私たちはヒトではマウスとは異なりドメインⅡ領域に対する血清学的交差性及び広域中和能を有する抗体を多く誘導していることを明らかにした。本研究では、ヒト型単クローン抗体のエピトープ領域を基にしたワクチン開発へ向けた基礎研究を行うことを目的とした。 タイ王国及びその周辺国での流行株の解析では、タイ王国、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、シンガポールから、計200株のウイルスを収集し、エピトープ領域のアミノ酸配列の決定を行い、相同性の検討を行っている。 マウスへの免疫原性への検討では、実験室株の配列を元にしてエピトープ領域に対するペプチドを合成した。また、その領域を含む組換え蛋白質の作製を行ない、これらを用いて免疫原性試験を行った。ブースト効果を検討する為、初回免疫には、実験室株を免疫し、2か月後に追加免疫としてペプチド及び組換え蛋白質での免疫を行った。なお、追加免疫では、キャリアータンパク質としてBSAを使用した。採血を21日後に行い、中和試験を行った。その結果、陰性コントロール(追加接種にPBSを使用)群でも中和能を示していることから、初回免疫で誘導された中和抗体価が十分には減弱しておらず、追加接種の結果がマスクされていることが考慮された。そこで、次にアジュバントを用いて、ペプチド及び組換え蛋白質だけの免疫での免疫原性の検討を行った。中和能に関しては、陰性コントロール(アジュバントのみ接種)群も中和能を示し、エンベロープ領域に対する特異的な抗体誘導以外の応答による中和反応が認められている。以上から、ペプチド及び組換え蛋白質を用いた免疫手法の検討がさらに必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究費の採択を受けた後、平成26年4月から大阪大学微生物病研究所より一般財団法人阪大微生物病研究会へと転職することとなった。転職先では科研費の受入は可能であったものの、デングウイルスの取り扱い経験がほとんどなく、実際に本研究を行うにあたりそれらの準備等に時間を費やしてしまい遅延を生じたことは否めない。また、マウスへの免疫法では、上述のように陰性コントロールによるバックの上昇の問題が出ており、より高い免疫原性誘導法の検討やバックを下げる手法の検討など更なる最適化検討が必要であると思われる。しかしながら、その他の点に関しては、ほぼ想定していた通りの達成度であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では、平成26年度には、1)タイの各県の患者の血液サンプルから、現在、タイで蔓延している各血清型のデングウイルスを分離し、そのエピトープ領域のアミノ酸配列の多様性について検討。2)この多様なアミノ酸配列について、組換え蛋白質、合成ペプチドの作製。3)組換え蛋白質、合成ペプチドを免疫原として、各種アジュバントと一緒に免疫し、抗血清を作製。4)種々のウイルスに対する中和活性を、上記3)で得られたマウス由来血清について順次調べる。5)上記3)由来マウス由来血清の、由来の異なるDENV-1~4型のそれぞれのウイルスに対するADE活性を測定。平成27年度は、6)新生仔マウス脳へのデングウイルス接種実験における、上記3)由来マウス血清の抗デングウイルス活性の測定。7)デングウイルス感染マウスモデルを用いた合成ペプチドワクチンの感染予防効果の検討。8)保存している感染歴のある健常人PBMCを用い、血清中抗デングウイルス抗体により、非感染、初期感染、二次感染を分別、その末梢血単核球の試験管内刺激を、4)で特定したアミノ酸配列による組換え蛋白質もしく合成ペプチドで行うex vivo実験を行い、マウスと同様の中和抗体の誘導が認められることを確認。を予定していた。 平成26年に関しては、上述のように遅延が生じており、特にマウスへの免疫及びその測定法の確立に関しては、第2四半期までに最適化を行う予定である。その後、第3四半期中にマウス免疫の本試験を行い、第4四半期にその解析を行う。一方で、タイ王国での臨床分離株の分離はほぼ想定通り進んでおり、配列の相同性の確認が終了後にペプチド、組換え蛋白質の作製を行い、これらを本試験で使用すると共に、並行してex vivo実験の検討を行う。
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Causes of Carryover |
本研究費の採択を受けた後、平成26年4月から大阪大学微生物病研究所より一般財団法人阪大微生物病研究会へと転職することとなった。転職先では科研費の受入は可能であったものの、デングウイルスの取り扱い経験がほとんどなく、実際に本研究を行うにあたりそれらの準備等に時間を費やしてしまい遅延を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスにおける免疫原性試験の最適化が当初予定より半年程度の遅れを生じている。しかしながら、免疫原性試験関連の実施が少々遅れるものの、平成27年度中に当初想定していたアウトプットを得ることは可能であると思われる。そのため、来年度は、平成26年度に計画していた試験計画の内、残りの試験分及び平成27年度分の試験を遂行する予定である。
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