2016 Fiscal Year Research-status Report
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26860771
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
高木 徹 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (20536891)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CTL / 細胞傷害性試験 / FACS |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、2つの目的(I. C型肝炎治療ワクチンを完成型に近づける、II. B型肝炎治療ワクチンプロトタイプの作製)のうち、I.を中心に取り組んだ。 マウスの免疫実験において有意な免疫反応を示し、ウイルス防御効果も認められたNS3-2タンパク結合ワクチンと、ウイルス防御効果が認められているNS3-5タンパク結合ワクチンについて、細胞傷害性試験を行った。ワクチン免疫マウスからリンパ球を分離し、試験管内で1週間、抗原で刺激したものをエフェクター細胞として用い、ペプチドパルスした細胞を標的細胞として用いた。細胞傷害性試験の方法は最も一般的である、放射性同位元素を用いた51Cr遊離試験にて測定した。しかしながら51Cr遊離試験は感度が低く、十分にNS3-2 及び NS3-5タンパク質特異的細胞傷害性T細胞の反応を検出することができなかった。また、51Cr遊離試験では、放射性同位元素を用いるため被爆が免れない。そこで私は、フローサイトメーターを用いた、新しい細胞傷害性試験の確立を試みることとした。フローサイトメーターを用いた方法では、51Cr遊離試験と異なり、マルチパラメーターでの測定が可能である。DiOCで染色した標的細胞をエフェクター細胞とPI染色液と混ぜることにより検討を行ったが、試験管内刺激により死んだエフェクター細胞もDiOCに染色されてしまい、正確なCTL活性が測定できなかった。次に私は標的細胞にGFP遺伝子を導入し、発現の高い細胞をソーターにより分取しクローニングを行った。GFP遺伝子を導入した標的細胞を用いた細胞傷害性試験を行ったところ、非常に感度がよく、放射性同位元素を用いないので安全である。これを応用して、細胞傷害性試験を行いながら、エフェクターの機能の測定をマルチパラメーターを検出できる方法を確立中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リポソームワクチンの治療効果の判定は、NS3タンパクを発現する組換えアデノウイルス感染による、治療実験により得られていた。感染マウスの肝臓中のNS3タンパクをIP/ Western法によりバンドを検出する方法だが、これは定量性に欠けていた。そこでNS3タンパク質を高感度に検出するために、NS3タンパク質をマウスに免疫し、9種類の異なるエピトープを認識するモノクロナール抗体を作製した。これらの抗体によるサンドイッチELISAでは非常に高感度でマウス肝臓中のNS3タンパク質を検出することができた。 次に、NS3タンパク質の精製を行った。NS3タンパク質は非常に可溶性に乏しいが3つの断片に分け、さらに親水性のタグを付け、大腸菌に発現させることにより親水性を向上させた。タンパク質の精製には、前述のモノクロナール抗体を使用した。精製したNS3-2タンパク結合ワクチンをC57BL/6マウス(H-2b)に免疫すると非常に高い免疫反応が誘導され、チャレンジ実験では強いウイルス防御効果が認められた。 本年度はワクチン効果を判定するために、51Crを用いた細胞傷害性試験を行ったが、感度が低く特異的T細胞反応を検出することはできなかった。そこで私は、フローサイトメーターを用いた新しい細胞傷害性試験を確立した。 従来の51Cr-release assayでは高価な放射性同位元素を使用すること、感度が低いこと、被爆が免れないこと、マルチパラメーターを測定できないことが挙げられる。それに対して私の方法では、放射線を使わないので被爆などの恐れがなく、非常に感度よく細胞傷害活性の測定すると同時に、マルチパラメーターを測定ができることが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、確立した細胞傷害性試験をさらに改良することを目指す。標的細胞で細胞傷害活性を確認することはもちろん、エフェクター細胞の機能などを調べることにより、マルチパラメーターでの測定を目指す。 この新しい細胞傷害性試験を用い、HCVタンパク結合ワクチンの評価を行う。NS3-2 及びNS3-5タンパク質結合ワクチンを、他のMHCハプロタイプをもつマウスに免疫し、免疫反応を確認するとともに、ウイルスのチャレンジ実験を行う。 HBVワクチンについては、HLA-A2 およびA24拘束性のペプチドを48種類、合成したので、4-5種類ずつプールしリポソームに結合させた。それをマウスに免疫し、反応の高いエピトープをワクチン候補とする。さらにそのエピトープを単独合成し、リポソームに結合し、同様の実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の半ばから、新しい細胞傷害性試験の確立を行っていたためである。本来であればHCVワクチンの改良のために大量のマウス免疫実験や、免疫マウスを用いてワクチン効果の判定を行うのに、各種抗体や試薬を購入する予定だった。同様にHBVワクチンにおいても、ペプチド合成を行う予定だった。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はHCV およびHBV ワクチン効果判定のための抗体や試薬などを購入する予定である。また、HBVワクチンにおいても、標識抗体や試薬を購入する必要があり、新しくペプチドも合成する必要がある。そして新しく確立した細胞障害性試験の改良のために各種試薬を購入する必要がある。
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