2014 Fiscal Year Research-status Report
エイズ発症者から分離された新規HIV-2が宿主防御機構から逃避する分子機序の解明
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26860777
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Research Institution | National Hospital Organization Nagoya Medical Center |
Principal Investigator |
根本 理子 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 流動研究員 (30625926)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HIV-2 / 組換え流行株 / 細胞指向性 / HIV感染抑制因子 / 初代培養細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、HIV-2組換え流行株とHIV-2 グループA株、B株について、由来の異なる細胞株に対する感染能を比較した。これまでにT細胞由来のR5-Marbleでは、HIV-2 グループA株、B株に比べてHIV-2組換え流行株が高い増殖能を持つことがわかっている。一方、ヒト子宮頸癌由来のMAGIC-5A細胞、TZM-bl細胞を使って培養した場合、HIV-2組換え流行株とHIV-2 グループA株、B株の間に顕著な増殖能の違いは見出されなかった。上記細胞は、すべてケモカイン受容体のCCR5, CXCR4を有しており、どちらかの受容体を用いて細胞に侵入、感染していると思われた。そこで、CCR5とCXCR4のどちらも発現しているR5-MaRBLEとCXCR4のみ発現しているX4-MaRBLEを使って、ケモカイン受容体に対する指向性を解析した。その結果、X4-MaRBLEにおいては、ほとんど感染が見られなかったことから、HIV-2組換え流行株はCCR5指向性であることが示された。さらに、CCR5阻害剤であるMaravirocに対して感受性を示した。その際の50%有効濃度(EC50)は0.6-7.7 nM、最大阻害率(MPI)は99-100%であった。次に、ウイルスの動態をより生体内に近い条件で比較するため、ヒト全血から調整した初代培養細胞を用いてウイルス増殖能の違いを評価した。その結果、末梢血単核球を用いた場合、HIV-2組換え流行株とHIV-2 グループA株、B株の増殖速度に顕著な差は見られなかった。一方、単球由来マクロファージを用いた場合、HIV-2 グループB株のみ、増殖がまったく見られなかったが、これはマクロファージのもつHIV感染抑制因子を分解する作用を持つvpxにpremature stop codonが入っているためと考えられた。HIV-2組換え流行株とHIV-2 グループA株の増殖速度には顕著な差は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に実施予定であった種々の細胞株におけるHIV-2組換え流行株とHIV-2 グループA株、B株の増殖能の比較だけでなく、当初平成27年度に実施を計画していた初代培養細胞における増殖能の比較も行なった。これまでのところ、HIV-2組換え流行株とHIV-2 グループA株、B株の間に顕著な増殖能の差は見出されていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は種々の細胞におけるHIV-2組換え流行株とHIV-2 グループA株、B株のウイルス増殖能の違いについて解析を行なったが、これまでのところ顕著な差は見出せていない。HIV-2組換え流行株とHIV-2 グループA株、B株に感染した患者の病態の違いが何に起因するのかを明らかにするために、ウイルスの増殖能だけではなく、感染した細胞や複製したウイルスのゲノムについても詳細な解析を行なっていく必要があると考えられた。最近の研究から、HIV-1については感染細胞ゲノム中のウイルスゲノムの挿入部位の違いが感染細胞の生存に影響することが示されている。このことから、感染細胞ゲノム中へのHIVゲノムの挿入部位の違いが病態の違いに関係している可能性がある。そこで、今後はHIV-2を感染させた細胞を用いて、感染細胞ゲノム中のウイルスゲノムの挿入部位についても詳細に解析を行なっていく予定である。
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