2014 Fiscal Year Research-status Report
線維細胞を指標とした気道リモデリング進展リスク評価法の確立
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26860787
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
林 仁幸子 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (70584853)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 気道リモデリング / 気道感染 / 線維細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児気管支喘息の増悪因子である気道感染症が、気道リモデリングに与える影響を解析するため気道感染病原体のpathogen associated molecular patternとしてLPS、Poly(I:C)、Pam3CSK4、PGNを用いてpathogen recognition receptor(PRR)であるTLR4、TLR3、TLR2への刺激が、線維細胞にどのような影響を与えるかを検討した。 末梢血単核球から高純度の線維細胞を分離培養し、LPS、Poly(I:C)、Pam3CSK4、PGNで刺激、48時間後に線維細胞を回収し、線維細胞から線維芽細胞への分化の指標としてα平滑筋アクチン(SMA)の発現の変化をフローサイトメーターで測定した。その結果、一部の刺激では、αSMAの発現が増加する傾向がみられたが、統計学的には有意ではなく、LPS、Poly(I:C)、Pam3CSK4、PGNの刺激のみでは線維細胞の分化は誘導されないと考えられた。 これまでの研究から、線維細胞自身はIL-13、IL-5を産生し、IL-33はその産生を増強すること、気管支喘息治療薬であるステロイドやロイコトリン拮抗薬は線維細胞のIL-13産生を抑制するが、IL-33存在下では抑制効果が減弱することを報告したが、線維細胞がアトピー性皮膚炎の皮膚の線維化に関与することから、アトピー性皮膚炎の治療薬であるカルシニューリン阻害剤が線維細胞機能に及ぼす影響を解析した。その結果、FK506存在下では、IL-33による線維細胞の増殖の増強効果が減弱する可能性が示された。しかし、線維細胞のIL-13、IL-5産生はFK506による有意な影響は受けなかった。FK506はステロイドやロイコトリエン拮抗薬とは異なる線維細胞機能を抑制することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画通り、ヒト末梢血から線維細胞を分離培養誘導し、気道感染の原因病原体のPRRであるLPS、Poly(I:C)、Pam3CSK4、PGNで刺激し、線維細胞の増殖・分化能、サイトカイン産生能等の機能解析を行なうことが出来た。また、線維細胞の機能を抑制する因子としてFK506の関与を明らかにするためにIL-33との共刺激での線維細胞の反応性を検討した。また、小児喘息患者臨床パラメーターと呼吸機能との関連性の解析は対象者数を増やして、平成28年度以降も引き続き継続し解析精度を向上させていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
線維細胞機能を抑制する因子を検討するために、FK506やtype Ⅲ IFNやtype Ⅱ IFNを用いて、増殖、サイトカイン産生、分化能、MMP産生を検証していく。 また、小児喘息患者臨床パラメーターと呼吸機能との関連性の解析は対象者数を増やして、解析精度を向上させ検証していく。 現在治療で用いられている吸入ステロイド剤やロイコトリン拮抗剤により気道リモデリングを完全に抑制できない理由を、線維細胞内のシグナル伝達系の薬剤抵抗性の点から明らかにする。 また、自然免疫応答における線維細胞の分化増殖反応を制御する上で重要な細胞内シグナル伝達系の標的分子を検索する。
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Causes of Carryover |
本年度、LPS、Poly(I:C)、Pam3CSK4、PGNで刺激し、線維細胞の増殖・分化能、サイトカイン産生能等の機能解析を行うために各種試薬を購入したが、LPS、Poly(I:C)、Pam3CSK4、PGNそれぞれの単独刺激では、線維細胞の分化に有意な変化を見いだせなかったことより、検討項目を変更することとし、購入した試薬の多くは、FK506による抑制作用の解析の方の検討に用いることとしたため、想定した試薬代がかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は、線維細胞から筋線維芽細胞への分化機構を中心に検討する予定であるため、繰越した研究費は、細胞内シグナルの解析に必要な試薬の購入代にあてる予定である。また、平成27年度は産休・育休を取らざるを得ない状況となったため、研究費の一部を実験補助員の人件費に割り当てることで、平成28年度以降の実験を進めていくことを考えている。
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