2014 Fiscal Year Research-status Report
異種移植モデルを用いたダウン症候群関連白血病の病態解析および特異的治療の基盤開発
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26860795
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
才田 聡 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70638254)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | TAM / AMKL / NOGマウス / 異種移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
TAMはダウン症候群の新生児の10%に起こり、新生児期に白血病様の細胞が一過性に増殖する疾患で、多くは自然消褪する。約10~20%の症例は、自然消褪した後に急性巨核芽球性白血病(AMKL)を発症する。TAMはダウン症候群に存在する21トリソミー に転写因子GATA-1の異常が加わって発症することが知られており、さらにTAM細胞に何らかの遺伝的異常が加わりAMKLへと進展することが推測されている。本研究では、TAMの異種移植モデルを作製し、白血病発症に重要な因子を特定し、新規治療開発への基盤開発を目指す。 1)TAM患者検体の収集およびTAM異種移植モデルの作製 全国より新規発生のTAM患者検体を収集し、さらに同意を得られた患者より提供されたTAM細胞(患者末梢血)をNOGマウスへ移植した。現時点で15症例の移植を行い、うち3例で生着を確認している。 2)患者検体およびマウス由来検体の遺伝学的解析 マウスへ生着した症例について、正常対照細胞、患者TAM/AMKL細胞、およびマウス内TAM由来細胞(一次、二次、三次移植検体)についてDNAを回収し、SNPアレイ解析を行った。生着したTAM 3症例は、基本的に由来患者の遺伝的性質を反映するものであった。引き続き、継代移植が可能であった1症例について、TAM細胞、1代目マウス由来細胞(TAMモデルマウス)、4,5,6代目マウス(白血病モデルマウス)についてエキソーム解析およびDNAメチル化解析を行った。エキソーム解析では、白血病モデルに共通する異常は検出されなかった。DNAメチル化解析では、患者検体であるTAM細胞と1代目マウス(TAMモデル)由来の細胞は同一のカテゴリーに分類され、4,5,6代目マウス(白血病モデルマウス)とは明確に分かれる結果となった。他の研究グループからの報告により、TAMから白血病への進展には、エピジェネティック修飾が関連する可能性が示唆されており、今回観察された事象は、その可能性を支持する結果であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画は以下の通りである。 1)TAM患者検体の収集およびTAM異種移植モデルの作製 2)患者検体およびマウス由来検体の遺伝学的解析(①エキソーム解析, SNPアレイ解析、②白血病発症に関わる候補遺伝子の抽出、③抽出された遺伝子異常の検証、④患者検体における詳細な検討) 3)日常診療における、本実験系の予後因子としての有用性についての検証 TAM患者検体の収集および異種移植モデルの作製については、TAM症例が発生した際に検体を収集し、異種移植を順調に行っている。またそれら作製した異種移植モデルマウスより採取した細胞について、エキソーム解析、SNPアレイ解析を行い、解析を行っている。近年、エピジェネティック修飾が、TAMからの白血病進展に関わっている可能性が示唆されているため、作製したモデルマウスにおけるDNAメチル化解析も合わせて行っている。本実験系の予後因子としての有用性の検討については、症例数の蓄積が必要なため、十分な検討が行えていないが、次年度の症例と合わせて検討することを予定している。以上のことから、本研究は概ね当初の予定通りに進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、移植を行ったTAM症例のうち、免疫不全マウスへ生着する症例はごく少数であることが分かっている。そのため、生着することが可能であった限られた症例について、TAM患者検体、TAMモデルマウス、白血病モデルマウスのそれぞれについて、網羅的な遺伝子解析、エピジェネティクス解析を継続して行っていく。 これまでに得られた結果から、白血病モデルでは、DNAのメチル化にTAM細胞とは異なる一定のパターンが観察されることが明らかとなった。このことから今後は遺伝子発現解析を組み合わせて行い、これらエピジェネティック修飾が、どのような遺伝子の発現に関わるかについての検討も行う。これらにより白血病化に関わる因子について、遺伝的、あるいはエピジェネティック修飾について網羅的に解析を行い、白血病(AMKL)発症に真に重要な因子を同定することを目標に研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
平成26年度と比較し、平成27年度は遺伝子発現解析などを行っていくため、より多くの使用金額が必要となるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウス由来骨髄細胞から、ヒト由来細胞を抽出する目的で使用するビーズ等の購入費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)