2014 Fiscal Year Research-status Report
単心室循環確立に伴う遺伝子発現変化:マイクロアレイ法による遺伝子プロファイル解析
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26860822
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
本田 崇 北里大学, 医学部, 助教 (50525532)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Fontan循環 / マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
Fontan 手術は左心低形成症候群などの心室が1 つしかない児に対する最終手術であり、Fontan循環(単心室循環)は肺血流を生み出す心室(肺心室)を有さないという点で極めて特殊である。近年、Fontan 術後の免疫・凝固機能の特殊性と、それらの蛋白漏出性胃腸症(PLE)、血栓症などの生命予後を左右する合併症発症への関与が明らかになったが、そのメカニズムは不明である。本研究では、血行力学的評価に加えて、遺伝子発現の網羅的解析を可能にしたマイクロアレイ解析という新しいアプローチで、単心室循環の確立に伴う遺伝子発現の変化を解析する。本研究の目的は、①Fontan 患者の特殊な血行動態が免疫・凝固機能の異常を引き起こす機序の解明と、②PLEや血栓症に対する新たな治療戦略提唱によるFontan 術後患者の予後改善である。 当該年度は、研究目的達成のために、①Fontan患者の血液検体の集積と、②左右短絡を有する先天性心疾患におけるマイクロRNAアレイ解析の予備実験を施行した。Fontan患者12例についてはすでに検体を集積することができた。また左右短絡を有する先天性心疾患ではマイクロRNAアレイ解析を行い、手術前後で6つのRNAの増強と3つのRNAの減弱を認め、それぞれが心負荷、心筋肥大や肺高血圧の変化を示していた。 次年度は、さらにFontan患者の検体を集積するとともにControl患者の検体を集積し、予備実験と同等の方法論に加えてメッセンジャーRNAに関してもマイクロアレイ解析を行い、単心室循環の確立に伴う遺伝子発現の変化を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験方法の把握に関しては当該年度の研究を通じておおむね習得することができた。Fontan患者の検体の収集については予定通りである一方、Control症例に関しては十分に進んでおらず、今後の努力を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画として、可能であればFontan手術施行までの各ステージにおいて血液検査を行い、継時的な変動を解析しようと予定していた。しかし対象患者が予定より少なく今後時間を有する可能性が高いと判断し、Fontan患者と心疾患のない患者との比較検討へ焦点を絞ることにした。 また当初の予定ではメッセンジャーRNAに関するマイクロアレイ解析のみを行う予定であったが、マイクロRNAに関してもアレイ解析を行う方針とした。マイクロRNAとは遺伝子発現を制御する機能を有するノンコーディングRNAであり、成人循環器領域において、心疾患の病態にmiRNA発現が大きな役割を果たすことが明らかにされつつあり、さらに血中に存在するmiRNAの新規パラメータとしての有用性も期待されている。したがって、マイクロRNAに関するアレイ解析を同時に行うことで、より詳細な体液因子動態を明らかにできる可能性が期待される。
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Causes of Carryover |
マイクロアレイ解析を行うRNAのうち、マイクロRNAに関する物品を購入したが、メッセンジャーRNAに関する物品は購入していない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度の研究において実験手法は習得できたため、来年度に検体数がそろった時点でマイクロRNA解析に用いる物品の購入のための費用に充てる。
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