2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜透過機能をもたせた抗ウイルス低分子タンパク質投与によるウイルス抑制効果
Project/Area Number |
26860835
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
關 文緒 国立感染症研究所, その他部局等, 主任研究官 (20443111)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞膜透過ペプチド / パラミクソウイルス / Pタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ウイルスRNAポリメラーゼ阻害機能を持つタンパク質に細胞膜透過機能をもたせることで、その投与によるウイルス抑制効果を明らかにすることを目的にしている。本年度は、まず細胞内発現系で麻疹ウイルスの増殖抑制効果が認められたPタンパク質由来の低分子タンパク質(P336)を用いて、大腸菌タンパク質発現系で作製の検討を行った。目的のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を大腸菌のコドンに適応させることで、大腸菌での十分量の発現が可能であった。 次に、細胞膜透過機能のためポリアルギニン(9R)配列を目的タンパク質に付加した。このタンパク質をNiカラムで精製し、抽出タンパク質をカラムで濃縮・溶液交換後、培養細胞に添加して細胞膜内への侵入効率の解析を行った。当初の研究計画では、精製用のタグである6His配列に対する抗体を利用し、蛍光抗体法により細胞内透過率を検討する予定であったが、細胞核が非特異に染色された。このため他の方法を検討し、染色用のタグとしてFLAGタグを目的タンパク質に付加して、タンパク質の構成を6Hisタグ-FLAGタグ-9R-P336とした。このタンパク質を精製し、細胞内への透過を解析したところ、FLAGに対する抗体で細胞内透過が確認された。しかし、染色されたタンパク質は主にドット状に観察され、細胞質内全体への分布が観察されたのはわずかの細胞であった。また、この精製タンパク質を添加後、ウイルス増殖が抑制されるか解析をおこなったが、明らかな減少が認められなかった。これらの結果から、現在の付加配列ではウイルス抑制に十分なタンパク質量が細胞内へ侵入できない可能性、また、作製したタンパク質に付加した配列が、P336のウイルス抑制効果に干渉している可能性が考えられる。このため今後、作製した配列が細胞内発現系でウイルス抑制効果を持っているか解析する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究計画では、本年度中にウイルス抑制効果をもつタンパク質を作製する予定であった。しかし細胞内透過機能は確認できたが、明らかなウイルス抑制効果が認められず、さらに解析が必要となった為。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果から、細胞内発現系で得られていた結果とタンパク質添加の結果が異なることが明らかになった。このため、細胞膜透過配列、タンパク質精製用タグ、染色用タグ、ウイルス抑制効果が認められている配列P336について、細胞内発現系を用いてウイルス抑制効果を阻害しない構成の検討を行う。細胞内発現系でウイルス抑制効果が認められた配列をもとにタンパク質を発現、精製し、細胞への添加で抑制可能なタンパク質の作製を目指す。当初計画で次年度に予定していた動物への投与は、培養細胞で十分なウイルス抑制効果が認められるタンパク質が得られた後に行う。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、本年度にウイルス抑制効果をもつタンパク質を作製し、これを用いてウイルス増殖抑制効果の解析を行う予定であった。本年度の研究実施状況は、研究途中で問題が生じ、この問題への対応を検討していたため、研究計画が遅れている。このため当初計画より使用額が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、本年度予定していたが遅れている研究計画に使用する。本年度予定していたウイルス抑制効果をもつタンパク質の作製のため、今後の推進方策に記載した様に細胞内発現系を利用したウイルス抑制効果をもつ配列の解析、このタンパク質の発現、精製、また、細胞への添加でウイルス増殖抑制効果をもつことの解析に使用する。
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