2014 Fiscal Year Research-status Report
脳室周囲白質軟化症における稀突起膠細胞の成熟抑制の機構解明と細胞移植療法への応用
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26860851
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三角 吉代 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70529148)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳室周囲白質軟化症 / オリゴデンドロサイト / 新生児低酸素虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、早産児脳性麻痺の原因となる脳室周囲白質軟化症(PWMI)において、低酸素虚血後に脳内でオリゴデンドロサイト(OLG)の成熟と髄鞘化を阻害している因子を同定し、そのメカニズムの解析を行うことを目的とする。さらに、得られた結果を幹細胞を用いた細胞補充療法へ還元させていくことを目指す。本年度は、PWMIモデル動物脳内で1)OLGが成熟阻害を受けている分化段階の同定、2)髄鞘化の傷害解析、3)網羅的遺伝子解析による発現変動遺伝子の同定を行った。 PWMIモデル動物を作成し、脳内でのOLGの成熟阻害時期を特定するためOLGの各分化段階のマーカーで免疫染色を行った。その結果、低酸素虚血(H-I)後すぐにはPDGFRとNG2陽性のOLG前駆細胞が傷害側の皮質・白質で有意に増加していた。一方、成長後の皮質・白質で成熟OLGのマーカーであるCC1陽性細胞を測定すると反対側に比較して有意に減少していることが分かった。さらに髄鞘化を検討するために成長後の皮質においてMBP(ミエリンマーカー)による免疫染色を行った。傷害部の皮質で運動・感覚野の上層(1~4層)において有意な発現減少が見られた。また、髄鞘走行にも違いが見られた。下層(5~6層)ではMBP染色性に違いは見られなかった。さらにOLGの分化・成熟に影響を与える因子の特定を目的として、H-I後の大脳皮質と白質において網羅的遺伝子解析を行った。反対側と比較したところ傷害側では約個の遺伝子に発現変化が見られた。GO解析の結果、proteolysisやcarbohydrate metabolic process, inflammatory responseに関与する遺伝子群での変化が多く見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、分化・髄鞘化傷害の解析と発現変動遺伝子の網羅的解析によるOLGの増殖・分化抑制因子の同定までを目指していた。分化・髄鞘化においては免疫染色法により傷害解析を行いオリゴデンドロサイトの増殖増加と分化・髄鞘抑制を同定した。また発現変動遺伝子の解析は、現在のところ因子の特定にはいたっていないが候補であるいくつかの変動遺伝子に焦点を縛り解析を行っており概ね予定通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果より、PWMI脳では低酸素虚血後にOLGの一過的な増殖促進が起こっていることが分かった。また成長後には髄鞘形成が低下していることからOLGの成熟抑制が起こっていることが考えられる。今後の推進方法として、網羅的遺伝子解析の結果より1)OLG前駆細胞の増殖を促進している因子、2)分化を抑制している因子、の同定を行いその細胞内メカニズムの解析を in vivo, vitroにおいて行う。 発現変動遺伝子のなかで細胞増殖あるいはOLGの分化に関与する因子を選択し、PWMIモデル脳で遺伝子発現の変動をreal-time PCRにより確認する。また、ウェスタンブロットによるタンパク発現の定量と免疫染色法による発現部位・発現細胞の特定を行う。 In vitroの実験では、初代培養(ラット脳由来のOLG前駆細胞)を用いて低酸素条件での培養を行い特定因子の発現を確認する。その後、遺伝子強制発現による促進実験あるいは、RNA干渉による抑制実験を行い、OLGへの機能を確認する。また、グリア細胞由来の因子である場合は、OLGとの共培養を行いその発現と効果を確認する。 得られた結果をもとに、初代培養OLG (GFP-rat由来)、幹細胞(iPS/ES)由来OLGでの増殖、分化への影響を確認する。PWMI動物への移植実験を行うことを目ざす。
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