2014 Fiscal Year Research-status Report
新生児低酸素性虚血性脳症に対する低体温療法の至適化のための包括的代謝解析の研究
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26860854
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
武内 俊樹 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60383741)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アセチル基 / 低酸素 / 新生児 |
Outline of Annual Research Achievements |
周産期における最重要疾患のひとつである新生児低酸素性虚血性脳症に対して、出生後速やかに低体温療法を行うことで、神経学的予後が改善されることが示されている。しかし、現在の新生児低酸素性虚血性脳症に対する低体温療法の治療効果は必ずしも十分ではない。これは、低体温療法が脳保護効果をもたらすメカニズムが未解明であるため、治療温度、復温方法、併用療法等の治療プロトコールの至適化が困難であることに起因する。低体温によって惹起される脳代謝の変動を、経時的かつ部位特異的に観察することにより、本治療法の分子標的・代謝制御のポイントを明らかにし、低体温療法の至適化に資することを目的として本研究を行った。生後7日のSprague-Dawley系雄性ラットの左総頸動脈を外科的に結紮し、2.5時間8%酸素に曝露した。その後38℃(常温群)または30℃(低体温群)に分けて21%酸素で再酸素化した。大脳から抽出した107種類の代謝物のメタボローム解析を行った。低酸素化直後では、非結紮側に比べて結紮側で、より顕著な代謝変化が観察された。低体温療法は、主要アセチル基供与体であるピルビン酸、神経賦活作用を有する神経伝達物質であるアセチルコリンを減少させ、コリンやカルニチンなどの脱アセチル化合物を増加させた。さらに、脳内の部位特異的代謝動態を定量的質量分析イメージングによって解析したところ、低体温療法により、海馬と扁桃体で特異的にアセチルコリンが減少し、大脳の全領域でグルタミン酸が減少することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した動物実験系の構築、メタボローム解析について概ね予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究で作成した幼若マウス低酸素虚血モデルを使用し、低酸素曝露に続く再酸素化後180分後に常温治療群と低体温療法の2群間でおこる代謝リモデリングを、脳、血液、肝臓についてメタボローム測定系を用いて包括的に解析し、放射性ラベル体を用いた動態解析を当該モデルマウスで行い、肝臓、血液、脳のそれぞれに取り込まれたグルコースやケトン体がどんな代謝経路を通って何に変換・利用されているのかを解析する方法について検討を進める。
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Causes of Carryover |
予定していた学会での発表が日程的に困難となったことや、研究を進める上で当初必要と考えていた消耗品の一部について、すでにある材料を利用することが可能となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、当該研究の目的達成および探索的展開のための研究資金として使用する。
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