2014 Fiscal Year Research-status Report
病態の進行抑制を目的とした、脆弱組織への細胞シート移植
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26860855
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
柿本 隆志 東京女子医科大学, 医学部, 博士研究員 (70566687)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胎児治療 / 細胞シート工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、縫合に耐えられない脆弱な胎児組織に対し、細胞シートを移植することで、患部を保護することが目的である。二分脊椎症は、胎児の脊髄が露出し、羊水暴露・子宮との接触により障害を受け続け重篤化する病態である。神経が障害を受けるため、下肢運動機能障害・膀胱直腸障害、合併症として水頭症・キアリ奇形などの症状がみられる。 この二分脊椎症に対して、現在では胎生19~25週の間に周辺組織・合成繊維を縫合し、露出した患部を閉塞する外科的治療が行われている。二分脊椎症は胎生4週から脊髄の露出が起こり、障害を受け続ける。そのため、早期の治療介入が効果的であると考えられが、胎生早期の胎児組織は非常に脆弱である。現行では治療時に「縫合」が不可欠であるため、胎児組織が縫合に耐えうる胎生19週以降に治療が行われている。つまり、早期治療が効果的ではあるが胎児の組織が脆弱であるため治療を行うことができない。 そこで本研究では縫合を必要としない細胞シート移植により、早期に患部を保護することで、より高い治療効果を期待している。細胞シートは、細胞を温度応答性培養皿で培養することで、酵素処理を行うことなく細胞をシート状に回収できる技術である。回収した細胞シートは酵素処理が行われていないため接着因子が保持されており、シート状のまま臓器への移植が可能である。縫合を必要とせず移植が可能な細胞シートの特性を活かし、現行治療では困難な胎生早期の新たな二分脊椎症治療の確立を目指している。早期に治療することで、現行治療への円滑な移行、また現行治療が可能な時期まで脊髄機能を保護し、患児のQOL向上へとつなげてゆく。 本研究では、レチノイン酸投与により誘導される、二分脊椎症モデルラットを用いて、細胞シートの移植による患部の保護効果・治療効果について検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実験計画において①移植細胞シートの作成②レチノイン酸による二分脊椎症モデル動物の作成③二分脊椎症モデル動物の評価を研究目標とした。以下に進捗状況を示す。 ①移植細胞シート作成 移植細胞シートはトランスジェニックGFPラットより採取した、口腔粘膜上皮細胞を温度応答性培養皿で培養し、口腔粘膜上皮細胞シートを作成した。作成した口腔粘膜上皮細胞シートは、免疫染色によりGFPの発現が確認された。 ②二分脊椎症モデルラットの作成 先行研究に従い、妊娠10目(9:00)の母獣にオリーブオイルに懸濁したレチノイン酸(60mg/kg)を経口投与し、二分脊椎症の発生率を検討した。先行研究では、胎児の6割が二分脊椎症を発症していたが、本研究では約2割程度の発症率に留まった。そこで、レチノイン酸投与時期を再検討した。種々な投与時期検討の結果、妊娠9日目(20:00)投与により、約9割において二分脊椎症発症を認めた。今後は同条件でモデルを作成し、細胞シート移植による治療効果を検討していく。 ③二分脊椎症モデル動物の評価 二分脊椎症モデル動物の評価のため、二分脊椎症発症を超音波検査により確認したラットを、移植日でのサンプリング、病態機能評価のため出産させた。サンプリングしたモデルは観察・染色により二分脊椎症発症を確認した。しかし、機能評価群においては、全てのサンプルにおいて母獣による食殺が発生した。そのため病態の経過観察は不可能であった。この結果により、出生後の経過観察は困難であると考えられ、モデルの経過観察、移植後の治療効果観察においても、研究計画見直しの必要性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度研究計画は細胞シート作成・二分脊椎症モデル動物作成において、当初の計画通りに進めることが出来た。 しかし、モデル動物の機能評価においては研究計画見直しが必要であると考えられる。申請時のH27年度研究予定は、細胞シートの二分脊椎症モデルへの移植・移植サンプルの評価①細胞シート移植経過観察群②出生後機能評価群である。 ①細胞シート移植経過観察においては、H26年度に作成方法を確立したモデル動物に、細胞シートを移植し、72時間後または48時間後に帝王切開によりサンプリングし、その生着を組織観察により評価する。これに関しては、申請時の予定通り行う。 ②出生後機能観察群であるが、H26年度の結果から、通常出産ではほぼ全てに食殺が発生すると考えられる。食殺が発生した場合には、結果が得られないため、出生後機能群を①の帝王切開によりサンプリングする群へ変更する。①のサンプル数を増やし、免疫染色により細胞シート移植による、神経保護・再生に注目して、研究を進める。
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Causes of Carryover |
H26年度申請金額と使用額に差が生じた理由は、初年度に行う予定であった、二分脊椎症モデル動物の評価において、実験内容の変更を余儀なくされたためである。 当初は二分脊椎症モデルを出生させ、新生児の下肢運動機能などの評価を行う予定であった。しかし、母獣による食殺が多発し、出生児の機能評価を行うことが出来なかった。そのため、実験を中断し、評価項目の再考を行った。実験の中断により、実験動物・試薬の発注も中断したため、当初の申請額との差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度の計画から、二分脊椎症モデルの出生後評価は困難であると判断し、実験内容に若干の変更を加え、研究費の使用目的を変更する。 H27当初の実験計画では細胞シート移植後に①帝王切開によりサンプリング②出生後の機能評価・治療効果の検証、を予定していたが、②を変更し、①実験のサンプル数を増やす。また同様に評価項目を増やし、より詳細に検討を行う。具体的には、免疫染色による検討項目を増やし、細胞シートの生着・神経再生効果について検討していく。
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Research Products
(2 results)