2014 Fiscal Year Research-status Report
プロテアソーム阻害剤による皮膚障害におけるPSMB8の変異解析
| Project/Area Number |
26860890
|
|---|
| Research Institution | Wakayama Medical University |
|---|
Principal Investigator |
国本 佳代 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10438278)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
| Keywords | プロテアソ－ム / 中條-西村症候群 / ＰＳＭＢ8遺伝子 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
中條-西村症候群(NNS)は、免疫プロテアソームbeta 5i サブユニットをコードするPSMB8 遺伝子の機能喪失型ホモ変異によってユビキチン蓄積を来す遺伝性自己炎症疾患である （Arima K, et al. PNAS 2011）。しかし、原因遺伝子が同定されたものの、プロテアソーム機能不全症の病態には解明されていない点も多く、いまだ有効な治療法はない。このような状況の中、新しい経口プロテアソーム阻害剤であるイクサゾミブ（未承認）の投与によって誘発された皮膚障害を経験したハーバード大学の医師よりコンサルトがあり、皮疹部の組織所見の検討を行ったところ、①真皮浅層から深層にかけての血管、付属器周囲、脂肪織にまで至る炎症細胞浸潤がみられる、②好中球浸潤はあるが、白血球核破砕性血管炎はみられない、③間質への浸潤細胞は主に組織球とリンパ球浸潤であるなど、NNSに類似した組織像を呈していた。プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブ（ベルケイド）の国内臨床試験では56%、特定使用成績調査では12%、またイクサゾミブの海外での臨床試験では35％に発疹が見られたと報告されているが、実際にベルケイドによる薬疹として血管周囲のリンパ球、組織球、好中球浸潤などのNNS類似の組織学的所見を示す毛嚢炎様丘疹や紫斑、浸潤性紅斑などの皮疹がみられる症例が国内外で報告されていることから、特にNNSに類似した臨床・組織像を呈した症例においては、何らかの遺伝的背景、特にNNSと同様の機能喪失型PSMB8遺伝子変異があった可能性が想定された。そこで、まずハーバード大学におけるプロテアソーム阻害剤によってNNS様皮疹を呈した2症例のパラフィン切片を取り寄せ、ゲノムDNAを抽出してダイレクトシーケンス法によってPSMB8遺伝子の変異を検索したが、いずれも問題となるような変異は認められなかった。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハーバード大学から取り寄せた、イクサゾミブ内服でNNS様の皮疹が誘発された症例の皮疹部組織からは、期待されたようなPSMB8遺伝子の変異は検出できなかった。同様にベルケイド投与でNNS様の皮疹が誘発された本邦症例を集積中であるが、当大学の血液内科においては現時点ではベルケイド投与に伴う皮疹を発症した症例がなく、またハーバード大学の症例において遺伝子変異がみられなかったこともあり、いまだ本邦症例の検討は行えていない。
|
| Strategy for Future Research Activity |
文献的には、ベルケイド投与でNNS様の皮疹が誘発された本邦症例は2014年までに13例の報告がある。各々の症例に対して遺伝子検索を含めた検討が可能か調査を行い、協力が得られる症例について、皮疹部の病理組織の検討と遺伝子検索を行い、その結果を学会や論文で報告する。何らかの機能喪失型の遺伝子変異が有意に認められれば、さらに来年度において、PSMB8ヘテロ変異をもつNNS患者家族（ヘテロ変異）由来不死化B細胞にプロテアソーム阻害剤を様々な濃度で添加し、その前後でのプロテアソーム活性の変化、サイトカイン、ケモカイン産生能を検討し、NNS患者（ホモ変異）由来不死化B細胞や健常者由来不死化B細胞での結果と比較したい。
|
| Causes of Carryover |
ハーバード大学での経口プロテアソーム阻害剤による皮疹を発症した症例の遺伝子検索が予想と違い、明らかな変異が認められなかったことより、日本人における変異が同定される確率は低いと考え、検索を行っていないため。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に行う予定のPSMB8ヘテロ変異の不死化B細胞の培養や試薬の購入などに使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)
