2014 Fiscal Year Research-status Report
皮膚の創傷治癒におけるIL-33/ST2シグナルの解析
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26860892
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
大塩 智之 自治医科大学, 医学部, ポストドクター (70572585)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / IL-33 / ST2 / ケラチノサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
野生型(WT)マウス、soluble ST2トランスジェニック(sST2 Tg)マウス及びIL33ノックアウト(IL33KO)マウスを用いて創傷治癒の比較実験を行った。4mmパンチバイオプシーを用いて背部皮膚に創傷を作製し、その面積を経時的に測定した。sST2 Tgマウスの創傷治癒はsoluble ST2過剰発現の影響を受けずWTとの差はみられなかった。免疫染色ではWTとsST2 Tgマウスともに早期から創傷辺縁部のケラチノサイト核内でIL-33が高発現し、再上皮化後にその発現消失が認められた。このことから細胞外から作用するIL-33は創傷治癒への寄与は小さいと示唆される。一方、WTと比較してIL33KOマウスではday2~4に有意な創傷治癒の遅れが認められた。このIL33KOマウスの創傷部ではマクロファージの浸潤増加と好中球浸潤の持続化がみられ、炎症性サイトカインIL-1、IL-6、CXCL1のmRNA発現も有意に亢進していた。この結果より、核内IL-33が創傷治癒に重要な役割を有しており、ケラチノサイトの増殖・浸潤だけでなく、炎症性サイトカイン産生や炎症性細胞浸潤の制御を通して関与することが示唆される。 ヒトケラチノサイト株HaCaTと正常ヒト表皮ケラチノサイトNHEKを用いた創傷治癒in vitroモデルであるwound scratch assayを行った。培養後ピペットチップでのスクラッチの有無による影響をリアルタイムPCRで検討したところ、HaCaTとNHEKともにIL-33発現に影響なかったが、ST2L、soluble ST2発現がスクラッチにより亢進した。 in vivoの結果の再確認及びより詳細なIL-33/ST2シグナル解析のためマウスケラチノサイト初代培養を試みている。現在、生後3日のWTマウスの皮膚からの表皮ケラチノサイト分離と培養の条件検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度のマウスモデル実験より、soluble ST2の過剰発現は創傷治癒に影響がないが、IL-33をノックアウトすることで皮膚の創傷治癒が遅延し、創傷部における炎症反応が悪化することが明らかとなった。IL-33が皮膚創傷治癒と炎症に関わるという新しい知見を得ることができ、次年度に予定しているリコンビナントサイトカインやインヒビターの投与実験に移行するために十分な結果を得られている。ヒト培養細胞を用いたin vitro実験にスクラッチによるIL-33発現が起こらず、マウスモデルの結果との乖離がみられているものの結果は順調に得られている。計画しているマウスケラチノサイトの初代培養の条件検討は開始しているが、確立した条件はまだ得られていない。研究の主たるマウスモデル実験は当初の予定通りに進んでいることから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の予定通りに、マウス創傷モデルではリコンビナントサイトカインやシグナルインヒビターを投与することで生体内における創傷治癒に関わるシグナル機構の解析と、in vivoから得られた結果の再確認と詳細なIL-33/ST2シグナルの解析のためマウスケラチノサイトの初代培養によるin vitro実験を計画している。現在のところ、IL-33のノックアウトによりマウス創傷の遅延と炎症悪化したことから、IL33KOマウスへリコンビナントIL-33の投与と、炎症悪化にNFkBの関与を想定しているためNFkBインヒビター投与を予定している。また、IL33KOマウスにおける炎症反応においては、PMA塗布により乾癬様皮膚炎モデルを用いてIL-33/ST2シグナルと炎症反応に関する情報を得る予定である。マウスケラチノサイトの初代培養ではWTマウスを用いてケラチノサイトの採取・培養の条件を確立させ、IL33KOマウス由来のケラチノサイトとの比較実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
経費の多くを使用予定であったマウスモデルを使用した実験がおおむね順調に進んだため、予定よりも経費の消費が少なくなり次年度へ繰り越す形となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費は消耗品の購入に充てる予定である。内訳としては、マウスの購入・維持費、リコンビナントサイトカインやシグナル阻害薬の購入費、解析のための抗体や実験試薬及び消耗品に充てられる。
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Research Products
(3 results)