2015 Fiscal Year Research-status Report
インターフェロンγが悪性黒色腫細胞のAKTシグナルを活性化する機序の検討
Project/Area Number |
26860895
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
種瀬 啓士 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70464815)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 悪性黒色腫 / CD74 / AKT / IL-6 / IL-8 / インターフェロンγ |
Outline of Annual Research Achievements |
インターフェロンガンマ(IFN-γ)は殺細胞効果や細胞増殖抑制効果を示すサイトカインである。しかし、固形癌患者にIFN-γを投与した場合の臨床効果は芳しくなく、悪性黒色腫の臨床試験においては寧ろ患者の予後に悪影響を及ぼす結果も出ている。このことからIFN-γは腫瘍形成に促進的に働く作用も有していると予想されるが、その機序は十分に明らかにされていない。我々は逆相タンパク質アレイを用いた細胞内の キナーゼシグナルネットワーク解析より、IFN-γが悪性黒色腫の主要なシグナル伝達経路であるAKTシグナルを活性化させることを同定し、この活性化の機序に膜蛋白質であるCD74が関与していることを同定した。CD74は元来MHC ClassIIのシャペロン蛋白として同定された蛋白質だが、その一部が細胞膜表面に直接移送されてMacrophage migration inhibitory factor (MIF)の受容体として機能することが判明している。我々はメラノーマ細胞株を用いた検討により、IFN-γ刺激によって細胞膜表面にCD74の発現が誘導されることを確認。また、CD74とMIFの相互作用がAKTシグナルの活性化や、腫瘍促進的に働くサイトカインであるIL-6やIL-8の分泌、抗アポトーシス蛋白であるBCL-2の発現に関与していることを同定すると共に、これらの作用がIFN-γ刺激によって増強されることを示した。更に、マウスのxenograft モデルを用いた検討では、IFN-γとMIFのアンタゴニストであるISO-1を同時に投与することで腫瘍の増殖抑制効果が得られた。以上の結果より、メラノーマ細胞がIFN-γの殺細胞効果や細胞増殖抑制効果、抗腫瘍免疫増強効果を回避する一機序として、細胞膜表面のCD74の発現が増加させて、MIFとの相互作用のもとに生存シグナルを活性化させることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度で4年計画の2年目が終了した。計画当初においては2年目終了時点でインターフェロンγによって発現が上昇し、かつAKTシグナル伝達経路を活性化させるような因子を発見し、その機能評価を行う予定であった。現時点ではその目標は達成し、マウスモデルの作成にも至れている。学術報告も学会、論文において行っており、計画通りに進んでいると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
この2年間の検討で発見するに至ったCD74およびMIFの発現が人の悪性黒色腫の予後にどのような影響を及ぼすのかを検討する。また、CD74以外にもインターフェロンγによって発現が上昇するような因子があることが予想され、それらの検討も行う予定でいる。
|
Causes of Carryover |
本実験は当初の仮説のとおりにほぼ順調に進捗しており、実験の失敗や当初必要と思われた種々の追加検討を必要とせずにここまで来られているため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度までに得られた成果を人の検体を用いて免疫染色を行う。また、本年度までに得られた候補因子以外の候補因子の探索も行う予定である。
|
Research Products
(9 results)