2015 Fiscal Year Annual Research Report
抗菌ペプチドによる神経反発因子の発現促進機構とアトピー性皮膚炎治療薬への応用
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26860898
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
鎌田 弥生 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (00410035)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗菌ペプチド / アトピー性皮膚炎 / 神経反発因子 / かゆみ |
Outline of Annual Research Achievements |
アトピー性皮膚炎(AD)の痒みは抗ヒスタミン薬に抵抗性であり難治性である。そのような難治性の痒みは不眠や就労障害の原因となり患者のQuality of Lifeを著しく障害する。AD病変部では、セマフォリン3A (Sema3A)等の神経反発因子の発現減少と神経成長因子(NGF)等の神経伸長因子の発現増加に伴う表皮内神経線維の稠密化による起痒刺激の受容増加と、抗菌ペプチドの減少に伴う易感染性が認められる。最近、我々は正常ヒト表皮角化細胞を抗菌ペプチドLL-37で刺激するとSema3Aの発現が増加することを見出した。そこで、平成27年度は、正常ヒト表皮角化細胞を用いて、1) 様々な抗菌ペプチド(ヒト β-ディフェンシン(hBD) 1-4及びLL-37)が神経反発因子及び神経伸長因子の発現に及ぼす影響、2) LL-37によるSema3Aの発現促進に関わるシグナル伝達系、3) ADモデルマウスへのLL-37配合軟膏の治療効果について検討した。 表皮角化細胞に添加したLL-37はSema3Aの発現を促進し、NGFの発現を抑制することが明らかとなった。他の抗菌ペプチド(hBD1-4)はLL-37のような作用は認められなかった。また、阻害剤を用いた実験により、LL-37によるSema3A発現誘導の細胞内シグナル伝達はMAPK経路の一部であるERKを介していることが判明した。また、予備実験としてADモデルNC/NgaマウスにLL-37配合軟膏を塗布した結果、掻破行動の抑制が認められた。以上の結果は、LL-37が表皮角化細胞におけるSema3AとNGFの発現のバランスをSema3A側にシフトさせ、痒みの原因となる表皮内神経線維の増生を抑制することを示唆した。
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