2014 Fiscal Year Research-status Report
皮膚炎症性疾患におけるマスト細胞L型カルシウムチャネルの働き
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26860901
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
葉山 惟大 日本大学, 医学部, 助教 (40647187)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マスト細胞 / 慢性蕁麻疹 / L型カルシウムチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに我々はマウスとラットのマスト細胞においてL型カルシウムチャネルが発現し、ロイコトリエンの産生やアポトーシスの抑制に関与することを示した。しかしながら今までの研究ではラットのマスト細胞セルラインやマウスの骨髄由来マスト細胞しか用いておらず、ヒト皮膚マスト細胞におけるL型カルシウムチャネルの機能はいまだに分かっていない。本研究はヒト皮膚マスト細胞におけるL型カルシウムチャネルの関与を調べ、さらに炎症性皮膚疾患においてどのような役割を果たしているかを調べる。 まずL型カルシウムチャネルの抗体を評価するために、ヒトの神経細胞、筋細胞、心筋細胞の免疫染色を行った。この実験でヒトの検体で使用できることを確認した。次にマスト細胞において上記の抗体が反応するかを確認した。抗体はL型カルシウムチャネルの細胞外ドメインであるα2δサブユニットに対する抗体を用いた。α2δサブユニットはL型カルシウムチャネルの機能ユニットであるα2サブユニットの発現を調節するサブユニットであり、この存在はα2サブユニットの存在を示唆する。マスト細胞はまずセルラインであるLAD2を用いた。実験はフローサイトメトリーを用いて行った。結果としてLAD2にはα2δサブユニットが発現していることが分かった。次にヒト皮膚マスト細胞におけるL型カルシウムチャネルの発現を調べた。ヒト皮膚マスト細胞は皮膚移植術を行う患者の余った植皮片より分離培養した皮膚マスト細胞を用いた。その結果、皮膚マスト細胞にL型カルシウムチャネルが発現していることが分かった。今後はさらにこの細胞を用いて機能の解析を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
皮膚のマスト細胞を培養するためには手術をする患者の検体が必要となる。しかしながら植皮片は最低限の領域しか採取しないため、わずかな検体しか得られないことが多い。そこから培養を行うため、実験に十分な量の皮膚マスト細胞を得ることが困難である。今後は泌尿器科の包皮切除術などで皮膚が余った場合に提供いただくなど、検体の量を得られるように改善していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究において培養ヒト皮膚マスト細胞においてL型カルシウムチャネルが発現していることが分かった。今後はこの培養ヒト皮膚マスト細胞を用いてL型カルシウムチャネルの機能の解析を行う。具体的にはニフェジピンなどのL型カルシウムチャネル阻害薬を用いて、ヒト皮膚マスト細胞の脱顆粒やサイトカイン産生、ロイコトリエン産生に影響を与えるかを調べる。またラットの細胞においてはL型カルシウムチャネルはアポトーシスの抑制に関与することが報告されているので、アポトーシス実験も並行して行っていく。 また皮膚炎症性疾患においてマスト細胞のL型カルシウムチャネルの発現がどのようになっているかを調べる。インフォームドコンセントを得た皮膚炎症性疾患(アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、尋常性乾癬など)の患者の皮膚生検検体を用いて、マスト細胞に特異的なトリプターゼとL型カルシウムチャネルの二重染色を行い、正常皮膚と発現量を比べる。正常皮膚は植皮術で余った検体を用いる。
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Causes of Carryover |
今年度はまだ初年度であるため、学会発表などを行っておらず、旅費などが余ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き現在の研究を進めていく。フローサイトメトリーのなどの機器は保有しているので、細胞培養用の試薬や抗体などの消耗品を購入するのに使用する。またある程度研究成果がまとまった時には学会発表を行う。
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