2014 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射による記憶障害とその保護:シナプスタンパク質局在変化に着目した解析
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26860980
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小金澤 紀子 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90643114)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | drebrin / 細胞骨格 / 樹状突起スパイン / HDAC阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では放射線照射による記憶障害を記憶障害の1つのモデルとして、その神経基盤の解明を目指している。放射線(X線・重粒子線)療法はがん治療では広く使われている治療法であるが、時に認知・記憶障害を引き起こすことが知られている。樹状突起スパインは興奮性シナプスのシナプス後細胞側の情報受容部位であるが、その形態学的可塑性は記憶・学習のような高次脳機能において重要な働きをしている。スパイン形態のダイナミクスはスパインに高密度で存在しているアクチン細胞骨格に依存している。アクチン線維結合タンパク質であるドレブリンはシナプス機能の指標の一つとなるが、我々はX線照射によりその集積が変化すること、スパイン密度・形態が変化することを明らかにしてきた。このことから、放射線照射によるシナプスタンパク質の局在変化、スパイン形態変化が記憶障害となって現れる可能性があると考え、in vitro系での放射線照射のシナプスタンパク質への急性効果ならびに動物行動実験での影響を検証している。これまでに、X線・重粒子線照射によるシナプスタンパク質の集積変化、細胞死への影響、さらに行動実験における結果を得ている。具体的には、10GyのX線照射によりドレブリンの集積が照射後2・8時で一過的に減少し、24時間後には照射前の集積具合に戻ることを新たに見出した。また細胞死については照射後8時間から有意にその数が増え、24時間後でも細胞死は多いままであった。同じく10Gyの重粒子線を用いた実験でも、ドレブリンの集積具合の一過性変化、並びに照射後2時間から細胞死の増加を認めた。X線10Gyを用いた行動実験では、照射後8時間の条件付で記憶障害が見られ、照射後24時間の条件付では記憶障害が見られなかった。これらのことから、放射線照射による記憶障害の基盤には、細胞死よりもシナプスタンパク質の影響が大きく現れることが示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初2年目に予定していた行動実験を先に進めており、1年目に予定していたスパイン形態変化の検証を2年目に行うことにしているので、順序の多少の前後はあるものの、当初の計画通り順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の結果、シナプスタンパク質の集積変化が放射線照射による記憶障害に大きな影響を及ぼしていると考えられる。本研究において特に着目しているドレブリンの集積具合の変化は樹状突起スパインの形態変化をもたらすことが示唆されているので、今後はスパイン形態の変化にも着目して解析を続ける。また、こうした放射線によるシナプスタンパク質への影響が引き起こすと考えられる記憶障害の保護作用についても検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
in vitro系において放射線照射による急性効果が一過性に認められたため、同じ時間系列での行動実験を先に解析した。このため、予定していた樹状突起スパインの形態変化解析を行うことができず未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スパイン形態変化解析に必要なトランスフェクション試薬等の購入および引き続き行う行動実験のための動物購入費に充てる。
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Research Products
(4 results)