2014 Fiscal Year Research-status Report
油性造影剤の比重変化が塞栓術時の生体内における造影剤分布に与える影響に関する研究
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26861017
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塚田 実郎 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50573276)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 油性造影剤 / 肝動脈化学塞栓術 / n-butyl 2-cyanoacrylate / 粘性度評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず基準となる油性造影剤の粘性度データをとるため、血液と等比重となるように調整した油性造影剤と血液より低比重となるように調整した油性造影剤を作成し、それぞれ外気温を模した24度、体内温度を模した37度に設定した際の粘性度を測定した。 また肝動脈化学塞栓術で使用する方法と同様の条件になるよう、抗癌剤(エピルビシン)を水溶性造影剤と生理食塩水の混合液に溶解し、作成した各油性造影剤と同じ比重となるように調整し、油性造影剤と抗癌剤水溶液との懸濁液を作成。油性造影剤と抗癌剤水溶液との混合比率を様々に変化させた際、また油性造影剤を等、低、高比重に変化させた際の粘性度の変化、懸濁液の安定性、X線視認性をそれぞれ評価した。この結果により、今回新たに作成した等比重、低比重油性造影剤の持つ特徴、また抗癌剤水溶液との間で作成した懸濁液の持つ流体力学的性質、放射線透過性に関する貴重な所見を得ることができた。 続いて作成した特殊な油性造影剤の性質を評価するため、ブタの肝動脈を用いた実験を行った。来年度以降に複数のブタを使用した本格的な動物実験を行う予定であり、そのための準備として油性造影剤の組織内分布を正しく評価するための実験系の摸索を行った。 具体的にはブタ肝動脈起始部にカテーテルを留置し、造影Cone-Bean CTを撮影して肝臓内の腹側亜区域・背側亜区域へ分岐する等しい太さの動脈分岐を二ヶ所同定した後、片方から高比重な懸濁液を、もう片方から等比重の懸濁液を多段階に分けて少量ずつ注入し、CTを撮影して油性造影剤の分布を確認した。また液状塞栓物質であるn-butyl 2-cyanoacrylate (NBCA)との混合溶液を低比重なものと高比重なものの二種類作成し、左右の腎動脈にそれぞれ別に注入してCTを撮影し、塞栓分布の評価を行った。いずれも良好な結果が得られ、来年度以降の実験の有効材料となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に必要な物品の整備や油性造影剤の作成、動物を用いた先行実験が予想を大きく外れることなく概ね順調に達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は先行実験で得られた実験ノウハウを利用し、等比重、低比重油性造影剤が生体内でどのように分布するか、また従来の高比重油性造影剤との間に分布の相違がみられるかを複数の個体を用いて検証していく。またバルーンカテーテルや様々な径のカテーテルを用いて注入する流速や条件を変化させた際の影響、太さの異なる血管での検証、動脈と静脈の違いなどの追加検討を加えていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は作成した油性造影剤の持つ流体力学的性質の把握、来年度以降実験に使用する懸濁液の作成・性質把握、次年度以降に動物実験を行う上で必要な情報収集、有効な実験系の検証が支出の中心であった。動物実験を中心に支出が生じる次年度以降のため、本年度の残額を次年度へと繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は複数のブタ個体の肝動脈、腎動脈を用いて等比重、低比重油性造影剤の性質を検証していくため、おもに実験成功のための情報収集と実験に伴う支出が中心となると予想される。
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