2014 Fiscal Year Research-status Report
乳癌における3β-HSD Type1発現の臨床的意義の解析
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26861041
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
花村 徹 信州大学, 医学部附属病院, 助教 (診療) (00532053)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 乳癌 / エストロゲン / ステロイド代謝 / 3β-HSD |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌におけるHSD3B1発現の臨床的意義に関しては未だ十分に解析されておらず,今回の解析を行った.【方法】未治療の乳癌161検体を用いHSD3B1発現を免疫染色法にて評価,各種臨床病理学的因子(年齢,閉経状況,組織型,腫瘍浸潤径,リンパ管侵襲,リンパ節転移,組織学的悪性度,ER,PgR,HER2過剰発現)および予後(無再発生存率:DSF,疾患特異的生存率:DSS)との関連につき解析した.【結果】HSD3B1はER陽性例において有意に高発現である一方HER2過剰発現の有無では差を認めなかった.以降ER陽性乳癌130例に限った解析結果を示す.HSD3B1高発現群は低発現群と比較し,有意に若年傾向,腫瘍浸潤径が小さい,非浸潤癌が多い,リンパ管侵襲陰性例が多いなどの特徴を認めた(p<0.05).予後の解析ではHSD3B1高発現群は低発現群と比較してDFS,DSSいずれも有意に良好(DFS:p<0.01,DSS:p<0.01:Log rank検定)で,多変量解析においてもHSD3B1発現はDFS,DSS両者において独立した予後因子であった(DFS:p<0.05,RR=0.34,DSS:p<0.05, RR=0.09:Cox比例ハザード回帰).AI単独による術後補助療法がおこなわれた症例(n=44)に限った解析でもHSD3B1高発現群は有意にDFSが良好であった.【考察】AI耐性メカニズムに関与する分子の候補として注目したHSD3B1は少なくとも未治療の乳癌においては腫瘍抑制的に働いていることが示唆され,とりわけHSD3B1が乳癌における予後因子であることが初めて見いだされたのは大変興味深い.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予想以上に実験及び解析に割く時間が十分にとれたことで、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本年度の研究成果を学会等で報告すると同時に論文として発表することを予定している。今後下記の点に関して研究を継続していきたい。 当初3β-HSD type 1をAI耐性メカニズムの候補の一つとして注目したが、今回の解析の結果少なくとも3β-HSD type 1はAI耐性マーカーとしては機能しておらず、かえって予後良好を示す因子であった。我々の過去の報告と、本研究の結果からは、未治療の乳癌と、AI耐性乳癌においてはそのホルモン環境の違いから3β-HSD type 1の果たす役割が異なっていると推測される。この点について今後さらに考察を行った上、今後の具体的なる研究計画を立てて行きたい。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも安価に研究を遂行できたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は平成27年度請求額に合わせて学会発表参加費、旅費、論文の英文校正や投稿費用に充てる。
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