Outline of Annual Research Achievements |
乳癌におけるHSD3B1発現の臨床的意義に関しては未だ十分に解析されておらず,今回の解析を行った.未治療の乳癌161検体を用いHSD3B1発現を免疫染色法にて評価,各種臨床病理学的因子(年齢,閉経状況,組織型,腫瘍浸潤径,リンパ管侵襲,リンパ節転移,組織学的悪性度,ER,PgR,HER2過剰発現)および予後(無再発生存率:DSF,疾患特異的生存率:DSS)との関連につき解析した.HSD3B1はER陽性例において有意に高発現である一方HER2過剰発現の有無では差を認めなかった.以降ER陽性乳癌130例に限った解析結果を示す.HSD3B1高発現群は低発現群と比較し,有意に若年傾向,腫瘍浸潤径が小さい,非浸潤癌が多い,リンパ管侵襲陰性例が多いなどの特徴を認めた(p<0.05).予後の解析ではHSD3B1高発現群は低発現群と比較してDFS,DSSいずれも有意に良好(DFS:p<0.01,DSS:p<0.01:Log rank検定)で,多変量解析においてもHSD3B1発現はDFS,DSS両者において独立した予後因子であった(DFS:p<0.05,RR=0.34,DSS:p<0.05, RR=0.09:Cox比例ハザード回帰).AI単独による術後補助療法がおこなわれた症例(n=44)に限った解析でもHSD3B1高発現群は有意にDFSが良好であった.AI耐性メカニズムに関与する分子の候補として注目したHSD3B1は少なくとも未治療の乳癌においては腫瘍抑制的に働いていることが示唆され,とりわけHSD3B1が乳癌における予後因子であることが初めて見いだされたのは大変興味深い.昨年度までに上述の解析をすべて終えており、本年度は研究成果を論文にまとめ報告した(Inpress)。
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