2014 Fiscal Year Research-status Report
高感度遺伝子解析法を用いた膵癌微小腹腔内遊離癌細胞迅速診断法の開発に関する研究
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26861043
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大屋 久晴 名古屋大学, 医学部附属病院, 招へい教員 (30723027)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 膵癌 / 腹膜播種 / KRAS変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は最も予後不良な固形癌であり、腹膜播種はその主要な予後規定因子の一つであるが、現行の病理学的細胞診では微量な腹腔内遊離癌細胞の診断は困難である。本研究では、新規高感度遺伝子解析法であるCast PCR法を用いて、高感度で迅速な膵癌微小腹腔内遊離癌細胞の検出を目的とした。 平成26年度の研究計画としては、 ・本研究に用いる手法の検出力および正確性の確認 ・腹腔洗浄液検体および臨床データの収集 ・高速化されたKitによる、高品質な核酸の抽出 ・高感度遺伝子変異検出技術による臨床検体(腹腔洗浄液)からのKRAS点変異の検出 現在までの研究実績の概要としては、 ・Cast PCR法の正確性および検出感度限界の確認;遊離癌細胞由来のDNA濃度が極めて低いと想定される腹腔洗浄液から変異を検出するためには、きわめて高感度な遺伝子変異解析手法が必須である。我々は、0.1%の微量な変異alleleを検出可能であることは予備実験において実証しており、同手法は安定して施行可能であると考えているが、臨床検体に移行する前に、検出感度の限界を確認した。既知のKRAS変異を有する膵癌細胞株によって希釈系列を作成し、どの濃度まで、再現性をもって変異が検出しえるかを検証した。結果、再現性をもって0.1%までの変異が検出可能であることを確認した。 ・臨床検体の収集とDNA抽出処理;継続的に、最終解析に用いる膵癌症例の腹水、コントロール症例の腹水検体を収集している。収集時には核酸保護液を用いている。検体は、おおむね2週間毎にDNA抽出kitを用いてDNA抽出を行い、順次微小転移解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず研究計画に則り、腹腔内遊離癌細胞検出法の正確性および検出力の検証を行った。 本研究で用いる高感度遺伝子変異解析法であるCast PCR法の正確性および検出感度限界を確認するため、膵癌細胞株を用いた希釈系列に対して同手法を実行した。G12DのKRAS変異を有する膵癌細胞株AsPC-1から抽出したDNAを、Wild type DNAにより10%、1%、0.1%、0.05%、0.01%と希釈系列を作成し、これを対象にCast PCR法を3回ずつ施行したところ、再現性をもって0.1%までの変異を検出し得た。臨床検体およびデータ収集、核酸の抽出は順調に推移している。迅速診断を可能とするためには高速化されたDNA抽出過程が必要であるため、DNA抽出はDNeasy Blood & Tissue Kit (Qiagen)を用いて行っており、1検体からのDNA抽出は15分で可能である。収集腹腔洗浄液から抽出したDNAを用いて、KRAS codon 12/13をターゲットにした Cast PCR法を順次行っている。良性疾患症例から得られたコントロール腹水と、膵癌症例の腹水を対象として解析し、データを蓄積しつつ、症例の予後調査を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、Cast PCR法で検出されたKRAS変異が、膵癌原発巣由来であることの裏付けを得るために、対応する膵癌組織でのKRAS変異塩基配列の確認を行う。腹水KRAS変異陽性症例のうち、良好な検体を入手可能な8症例において膵癌原発巣からDNAを抽出し、これに対するSequencingを行ってKRAS変異の有無、配列を調べる。次に、Cast PCR法による微小腹腔内遊離癌細胞検出の臨床的有用性、診断能を評価するため、全対象検体において、現行の腹膜転移診断法である病理学的細胞診検査と過去に報告されたRT-PCR法との比較を行う。RT-PCR法は、腹腔洗浄液検体から抽出されたRNAから逆転写反応によってcDNAを作成し、CK19、CK20およびCEA発現レベルを定量的RT-PCR法により調べる。さらに、本研究の手法、病理学的細胞診検査、RT-PCR法のそれぞれにおいて、微小腹腔内遊離癌細胞の存在及び局在と、術後生存期間、再発形式(特に腹膜播種再発)との相関解析を行い、検出された微小遊離癌細胞の臨床的意義を明らかにする。特に、細胞診検査が陰性かつ本法が陽性となった症例の解析結果が重要であると考えている。
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