2015 Fiscal Year Research-status Report
Wnt5a陽性乳癌の薬剤耐性獲得機構の解明と制癌療法への応用
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26861049
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梶谷 桂子 (滑川桂子) 広島大学, 大学病院, 医科診療医 (30700041)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Wnt5a / 乳癌 / 治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
Wnt5aは、β-カテニン非依存性経路の代表的なリガンドであり、JNKやRhoキナーゼを介して細胞運動や接着、細胞極性などに関与している(Kurayoshi 2006, Yamamto 2009)。これまでに、Wnt5aは胃癌、悪性黒色腫、悪性リンパ腫の悪性度に関与していることが報告されていたが、乳癌におけるWnt5a発現の意義については明らかでなかった(Bittner 2000, Hanaki 2012)。 我々は、この研究によって以下のことを明らかにした。 (1)乳癌におけるWnt5a発現と悪性度との関係を解析し、①乳癌全体の約30%にWnt5aが過剰発現していること、②Wnt5a陽性乳癌はER陽性乳癌と非常に強い相関があること、③Wnt5aの発現はリンパ転移や脈管侵襲、Ki67 labeling indexなど病理学的予後因子と相関している。(2)Wnt5a発現乳癌細胞株を用いたDNAマイクロアレイにより、Wnt5a発現により誘導される新規蛋白質としてActivated leukocyte cell adhesion molecule(ALCAM)を含む複数の分子を同定した。(3)Wnt5a発現乳癌細胞株は、コントロール細胞に比べて遊走能、運動能が亢進しており、Wnt5aにより誘導されたALCAMが細胞接着、浸潤を介して乳癌の悪性度、転移に関与していると考えた。(4)そのメカニズムについて、Wnt5aの発現によりJNKのリン酸化が亢進し、ALCAMの発現を誘導することを明らかにした。 ている。以上より、申請者らは、Wnt5a/ALCAM陽性乳癌はER陽性乳癌において一つのグループを形成し、細胞接着、遊走、浸潤を亢進することによりリンパ節転移を高率に来たしていると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究では、まず乳癌におけるWnt5aの発現状況を調べ、Wnt5aが乳癌のどのサブタイプと相関しているか、また悪性度との相関はどうか、を検討した。約200症例による解析からは、乳癌全体の約30%にWnt5aが過剰発現し、ER陽性乳癌と非常に強い相関があること、Wnt5aの発現はリンパ転移や脈管侵襲、Ki67 labeling indexなど病理学的予後因子と相関していることが明らかにわかった。
次のステップは、Wnt5a悪性化のメカニズム解析であるが、Wnt5a細胞株の樹立、またそれを用いた解析により、Wnt5a発現により誘導される新規蛋白質としてActivated leukocyte cell adhesion molecule(ALCAM)を含む複数の分子を同定し、Wnt5aの発現によりJNKのリン酸化が亢進し、ALCAMの発現を誘導することを明らかにした。
これらのデータにより今後の臨床への応用の足がかりができたため、今後はマウス転移細胞モデルを作製し、Wnt5aやALCAMをターゲットにした治療開発へと研究のフィールドを映していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Wnt5aをターゲットにした治療法の開発へと研究テーマを移して検討する。
Wnt5a→JNKのリン酸化が亢進→ALCAMの発現を誘導→細胞の遊走能亢進、というメカニズムが明らかになったので、まずはin vitroで、WNt5a陽性乳癌細胞部の各種乳癌治療薬(ホルモン療法、化学療法など)の感受性を調べることが開始する。Wnt5aはER陽性乳癌に発現しいるため、ホルモン治療薬の感受性がWnt5aの発現により変化している可能性がある。WN5a抗体との単独もしくは併用の治療効果をまず細胞を用いた実験系で明らかにする。
続いて、マウス転移モデルを作製し、in vitroで得られたデータをもとにして、in vivoでの治療効果を各種乳癌治療薬およびWNt5a抗体、RNAiなどで検討していく。 良い結果が得られれば、臨床試験まで発展できることを期待している。
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Causes of Carryover |
今年度は、主に培養細胞を用いた実験を行ったため、マウスなど動物を用いた実験が行えなかった。そのため、いくらかの差額が生じた。次年度は、動物実験が増えるため使用する金額は増える予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、動物を用いた新規Wnt5a治療の開発が主なテーマになっている。マウス購入や治療薬の購入、Wnt5a抗体の精製や購入など、高額な経費が増えてくる。また、成果を発表する学会や論文の作製などにも研究費を投じる予定である。
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Research Products
(3 results)