2014 Fiscal Year Research-status Report
食道扁平上皮癌幹細胞に対するヒストン修飾を標的とした新規治療戦略の検討
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26861061
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
村上 健太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40436382)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食道扁平上皮癌 / 癌幹細胞 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞は、抗癌剤や放射線療法に治療抵抗性を示し、再発の原因となると考えられる。本研究ではこの点に着目し、エピジェネティクスという新しい側面から、食道扁平上皮癌幹細胞を標的とした新規治療開発のための研究基盤を確立することを目的とする。 1:食道扁平上皮癌幹細胞の濃縮方法の確立 扁平上皮癌幹細胞の単離は遅れており、食道扁平上皮癌に関する報告は極めて少ない。本実験では、食道扁平上皮癌癌幹細胞の濃縮方法を確立することを目的とし、幹細胞特性を有する細胞分画を分離する。(既存の細胞株を用いて)sphere formation assayを施行したところ、食道扁平上皮癌細胞株T.Tn,TE1,TE2がsphereを形成した。このsphereを分解し非接着条件で培養したところ再度sphereを形成し自己複製能が確認された。さらにMTT assayを用いてsphereを構成する細胞の抗癌剤感受性を検討したところCDDPに抵抗性を示した。以上の結果からsphere内に幹細胞特性を有する細胞が含まれると考えられ、上述の細胞株を用いて他癌で幹細胞マーカーとされるCD24,44,90,133,EpCAMの解析を行った。sphere構成細胞における陽性細胞の比率は、全細胞における比率と比べ、ほぼ同程度か低率であった。sphereに強く発現する細胞表面マーカーの同定は困難であったため、機能的マーカーであるaldehyde dehydrogenase(ALDH)を検討する方針とした。ほぼ全てのsphere構成細胞がALDH陽性となり、ALDH陽性細胞が濃縮されていた。ALDHが食道扁平上皮癌幹細胞マーカーの候補になりうると考えられた。(手術検体から樹立した新規細胞株を用いて)胸水や腹水中の癌細胞は3次元培養することにより容易にsphereを形成した。今後細胞株と合わせて検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目的は、食道扁平上皮癌幹細胞の濃縮方法の確立であった。既存の細胞株を用いて検討した結果、ALDHが食道扁平上皮癌幹細胞マーカーとして有用であるとの結論を得ることができた。また、手術検体から樹立した新規細胞株を用いた検討に関しては検討中であるが、胸水や腹水中の癌細胞が3次元培養することにより容易にsphereを形成することが分かった。患者由来の腫瘍モデルを作成し、早急にALDHの幹細胞マーカーとしての有用性を確認していく。また、平成27年度の目的は、食道扁平上皮癌幹細胞におけるヒストンメチル化酵素EZH2阻害剤およびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤による幹細胞特性の変化の分析、および2剤併用療法の有用性の検討であるが、既に検討を開始しており、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤単独では抗腫瘍効果が得られないことを証明した。引き続き幹細胞特性の変化の分析を行っていく予定である。研究は概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後まず、ALDHの食道扁平上皮癌幹細胞マーカーとしての有用性を確実なものにしていく。細胞株の検討からALDHが候補として挙がったので、患者由来の腫瘍モデルを作成し、マーカーとしての有用性を証明する。患者由来の腫瘍モデルとしては、上に述べた胸水や腹水中の癌細胞を3次元培養する方法、手術検体の癌組織をマウスの皮下もしくは食道に移植する方法を考えている。これと平行して、平成27年度の目的である、食道扁平上皮癌幹細胞におけるヒストンメチル化酵素EZH2阻害剤およびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤による幹細胞特性の変化の分析、および2剤併用療法の有用性の検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
手術検体から樹立した新規細胞株を用いた検討に関して検討する予定であったが、胸水や腹水中の癌細胞が3次元培養することにより容易にsphereを形成することが分かったため、実支出額が低く抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後まず、ALDHの食道扁平上皮癌幹細胞マーカーとしての有用性を確実なものにしていく。細胞株の検討からALDHが候補として挙がったので、患者由来の腫瘍モデルを作成し、マーカーとしての有用性を証明する。患者由来の腫瘍モデルとしては、胸水や腹水中の癌細胞を3次元培養する方法、手術検体の癌組織をマウスの皮下もしくは食道に移植する方法を考えている。マウスを購入する資金に使用する計画である。
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