2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン制御による肝胆膵領域悪性腫瘍の上皮間葉転換制御と化学療法抵抗性の克服
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26861069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阪本 卓也 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (40645074)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 / 化学療法抵抗性 / 胆道癌 / ヒストン制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、癌の浸潤や化学療法抵抗性などを引き起こす上皮間葉転換 (epithelial-mesenchymal transition ; EMT) を制御する因子としてヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) 阻害剤に着目し、その代表的薬剤であるvorinostatがEMTおよび化学療法抵抗性に与える影響およびその分子的機構を明らかにすることを目的とした。 実験には2種の胆道癌細胞株 (MzChA-1、TFK-1) を使用した。これらの細胞株を炎症性サイトカインであるTGF-βに曝露することでEMTが誘導され、vorinostatとTGF-βの併用曝露ではEMTの誘導が抑制されることを、qRT-PCRによるEMTマーカーの発現比較で確認した。また、TGF-β曝露により化学療法抵抗性が増強するのに対し、vorinostatを併用することで化学療法抵抗性の増強が抑えられることをMTT assayにて確認した。 次に、前述の胆道癌細胞株からgemcitabine (GEM) 耐性株をそれぞれ樹立し、各耐性株におけるvorinostatの効果を検討した。その結果、耐性株をvorinostatに曝露することで、EMTは抑制され、GEMに対する抵抗性の減弱がみられた。 VorinostatがEMTを制御する因子として、TGF-βのシグナル伝達分子であるSMAD4に着目し、vorinostatが、TGF-βによるSMAD4の核内移行を阻害することを確認した。 以上の結果から、vorinostatはTGF-βシグナル伝達分子であるSMAD4の核内移行の阻害を介して、EMTを制御し、化学療法抵抗性を減弱させると考えられた。実臨床への応用として、化学療法の効果に乏しい胆道癌においても、HDAC阻害剤を併用することで化学療法に対する抵抗性を減弱し、予後の改善につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの実験結果より、TGF-βの曝露あるいは胆道癌における標準的抗癌剤であるgemcitabineの長期曝露によって生じた上皮間葉転換 (EMT) に対して、EMTの制御および化学療法抵抗性の制御という点において、HDAC阻害剤であるvorinostatの有用性が示された。また、HDAC阻害剤がEMTを制御する機構については、他の文献において中皮細胞や正常肝細胞においてHDAC阻害剤がTGF-βのシグナル伝達分子であるSMAD4の核内移行を阻害したという報告から、癌細胞においても同様の機構が成り立ち、vorinostatがTGF-βのシグナル伝達を阻害することでEMTを制御していると考え、実際にvorinostatがSMAD4の核内移行を阻害することをwestern blottingにて確認した。これらの結果から、今まで癌細胞において示されていなかったHDAC阻害剤がEMTを制御する機序の一端が示されたと考えられる。 本研究の目的は、「HDAC阻害剤がEMTおよび化学療法抵抗性に与える影響について検討し、その分子的機構を明らかにする」としており、これまでに得られた一連の結果は、HDAC阻害剤であるvorinostatがEMTおよび化学療法抵抗性の制御において有効な薬剤である可能性を示唆するものである。このことから、本研究が目的に沿って順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの実験結果により、in vitroにおいてvorinostatがEMTを制御し、化学療法の抵抗性を減弱させることが示された。また、その機序についても、TGF-βのシグナル伝達分子であるSMAD4が関与していることを示した。しかしながら、HDAC阻害剤によるどのような遺伝子の発現の変化がSMAD4の核内移行を妨げているかについては未だ不明である。さらに詳細な機序を解明するための方策として、HDAC阻害剤投与による遺伝子発現の変化を調べるため、Control群、TGF-β投与群、TGF-β+HDAC阻害剤併用群の3群間において、網羅的遺伝子解析を用いた遺伝子の発現比較を行うことを検討している。また、肝胆膵領域悪性腫瘍に対する新たな治療薬としてHDAC阻害剤の臨床応用を目指すにあたり、in vivoにおいても、HDAC阻害剤の有効性を示す必要があると考える。当初の研究計画に沿って、今後、免疫不全マウスを用いて胆道癌細胞株および抗癌剤耐性胆道癌細胞株の皮下腫瘍モデルを作成し、gemcitabine単剤投与とHDAC阻害剤併用投与における腫瘍形成能や生存期間の違いについて検討を行う予定である。さらに、同標本における腫瘍組織の切除サンプルを用いて、免疫組織染色を行い、EMTマーカーおよびSMAD4の生体における発現変化についても検討を行う。また、胆道癌に対する根治的切除を行った症例の切除サンプルを用いて、本研究におけるTGF-βやSMAD4などの発現と生存率や再発率との関係性についての検討も行う。これら結果をとりまとめ、学会発表および論文投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に必要な物品を購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度に必要な物品を購入するため。
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Research Products
(2 results)