2014 Fiscal Year Research-status Report
治療抵抗性消化器癌に対する癌関連線維芽細胞を標的とした新規治療法の開発
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26861077
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
野間 和広 岡山大学, 大学病院, 助教 (10534761)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食道癌 / 治療抵抗性 / 癌関連線維芽細胞 / 光線免疫療法 / 近赤外線光 / 化学療法 / 放射線療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、癌における抗がん剤や放射線治療抵抗における癌関連線維芽細胞(CAF)の関与が示唆されていることから、CAFの癌幹細胞やEMTとの関連性を解明し、さらに光線免疫療法を用いてCAF自体を標的に死滅させ今まで困難であった治療抵抗性癌における根治的な新規治療法を開発する事を目的とする。 初年度である平成26年度はCAFと癌細胞の癌幹細胞化やEMT への影響を解析し、実際のCAFの治療抵抗性への影響を検討した。In vitroにてmigrationやinvasion assayなど行い、何れもCAF刺激により癌細胞の悪性化を認めた。また癌細胞のmorphological変化やVimentin高発現やE-cadの減少などEMTとの関与も示唆された。さらにCD133の増強を認めCAF刺激による癌幹細胞化も示唆された。最も重要である治療抵抗性もCAFによる刺激により5FUやDocetaxel、放射線治療への感受性低下など治療抵抗性を認めた。In vivoでは同様にCAFによる移植腫瘍の5FU治療抵抗性獲得を確認した。 続いてPITを用いたCAFを標的とした治療を行った。まず特異的にCAFを殺傷することが可能かin vitroにてFAP発現するCAF特異的に近赤外光にて殺傷可能であることを実証しin vivoの実験においても5FUに治療抵抗性を示していた腫瘍にPITを用いてCAFを制御すると治療効果を得ることが確認された。 以上のことより、当初予定していた平成26年度の検討項目はほぼ完了しており、特にCAFの治療抵抗性の立証と特異的CAF制御の治療法の確立ができたことは非常に有意義である。奏功率の低い従来の抗癌剤に加えて癌微小環境の中心的な役割を担うCAF細胞を標的とすることでより奏功率の向上や患者の生存率の向上につながりうると考えられた。次年度はその検証と報告を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成26年度は、CAF細胞と癌の関連における癌細胞の癌幹細胞化やEMT への影響を解析し、実際のCAF細胞の治療抵抗性への影響を検討することとしP1からP4までを行う予定とした。食道扁平上皮癌細胞TE4およびバレット腺癌OE19を用いて検討した。P1についてはIn vitroにて悪性化としてmigration assayやinvasion assayそしてcolony formation assay何れにしてもCAF細胞刺激により癌細胞の悪性化を認めた。またEMTとして細胞の間葉系形質へのmorphologicalな変化やVimentinの高発現やE-cadの減少を認めた。癌幹細胞についてはCD133の表面マーカーの増強を認めCAF細胞刺激による癌幹細胞化が示唆された。P2についてはIn vitroにてCAF細胞による5FUやdocetaxelまたは放射線治療における治療抵抗性獲得を確認した。P3の検討は行えていないが先のP2における治療抵抗性獲得をin vivoにて検証し、5FUに対する治療抵抗性を確認した。続いてP4としてPITを用いたCAFを標的とした治療を行った。まずCAF細胞を特異的に殺傷できるかin vitroにて確認し、FAP発現するCAF細胞特異的に近赤外光にて殺傷可能であることを実証した。またin vivoの実験においてはCAF細胞との共培養にて5FUに治療抵抗性を示していた腫瘍においてもPITを用いてCAFを制御することで治療効果を得ることが確認された。 総括して初年度である平成26年度は、当初予定していたP1からP4までの検討項目のうちほぼ完了している。P3の食道癌細胞のHER2発現等が未検討であるが、治療抵抗性に対するin vivo試験を追加で確認できている。以上より概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度である平成27年度においては、当初の予定通りさらにin vivoを中心とした検討を行う予定である。別の抗がん剤や同所性移植モデルを用いた様々な条件でのPITを用いたCAF細胞の制御が腫瘍の治療抵抗性にどのように貢献できるか検討を行う予定としている(P4)。また26年度で未検討である食道癌細胞のHER2発現の検討やTra-IR700を用いたPITの効果の検討等もin vitroにて行い先のin vivoでの併用療法に繋げる予定である。さらに最終年度である本年においては、研究の総括および統計学的な解析を行い、学会等での発表や論文での発表を行う予定である。すでにAACR2015の発表を4月に行い、また6月に関西胸部外科学会、9月に日本癌学会にて発表予定となっている。また論文発表も現在随時進行中であり本年度中に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
食道癌細胞における標的とする表面抗原HER2タンパクの発現の解析が未検討であり、抗体や細胞培養等の費用がかかっていない点が主な理由と考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度である平成27年度においては、当初の予定されていたin vivoの検討に加えて初年度で未検討である上記食道癌HER2発現の検討を行う予定であるので、その費用として次年度使用額を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)