2015 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌患者における腹腔内血中循環癌細胞を介した肝転移巣形成機構の解明
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26861086
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
足立 智彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (60437879)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 膵癌 / 血中循環癌細胞 / 肝転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、膵癌肝転移の制御に向けて、肝流入血(肝動脈・門脈)における血中循環膵癌細胞(CTC)の検索およびCTCの接着能・腫瘍形成能を詳細に解析することで、至適抗がん剤投与経路の選択を行い、高リスク例の選別により膵癌肝転移の抑制、生存率の改善を図ることにあった。そこで本研究では、肝流入血と皮膚末梢血におけるCTC数を比較、また接着能を細胞膜糖鎖抗原発現により検討、さらに腫瘍形成能をSCIDマウス皮下へのCTC移植実験により証明することで、本研究によりCTC全般と転移巣形成に関する学術的知見を得ることを期待した。 具体的に、まずCTCの有無の検索を施行、膵頭部癌8例において、腫瘍摘出前の末梢血/腫瘍摘出前の門脈・肝動脈血/腫瘍摘出後の門脈血においてCTC採血を施行、末梢血からは1例も検出されなかったが、腫瘍摘出前の門脈/動脈血では2/8例(25%)に、腫瘍切除後の門脈血からも2/8例(25%)(前後重複1例)が検出された。一方、それら検出あり3/8例(37%)の予後に関し、検出なしと比しても、平均生存期間は共に37ヶ月と予後に差異は無かった。実際に初発の再発部位が肝臓だった症例は1例のみだったが、これは腫瘍切除前後ともに門脈内にCTCが検出されている唯一の症例である。これら予後の差異を認めない状況の推察として、近年の臨床試験を経て全例に対し切除後補助化学療法が導入されており、それらが肝転移抑制・予後延長に寄与している可能性を考える。 一方、CTCにおける糖鎖抗原発現の検討あるいは、マウスへのCTC移植実験を企画していたが、CTC検出症例における実検出細胞数は全て1個/7.5ml血中と非常に少ないことが判明した。これは他部位の腫瘍での他家報告と反するものがあり、膵癌の場合、CTC流出自体が少ない可能性が示唆され、また検討のためのCTC確保も困難であることがわかった。
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