2016 Fiscal Year Research-status Report
新たな免疫制御細胞に着目した悪性胸膜中皮腫に対する複合免疫療法の開発
Project/Area Number |
26861118
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田川 哲三 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90419557)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 悪性胸膜中皮腫 / 肺癌 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(平成26年度)にヒト胸水、腫瘍からのリンパ球分離、フローサイトメトリーによるリンパ球の表面抗原解析を行う実験系の確立を行った。しかし、胸水中のリンパ球が少なく、十分な解析を行うことができなかった。 平成27年度は、よりリンパ球を多く含むヒト肺癌腫瘍より腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)を分離し、表面抗原の解析を行った。TILを分離した後、CD45、CD14、CD15、CD11bなどの表面抗原を染色し、フローサイトメトリーによって解析した。表面抗原の発現により、ミエロイド由来抑制細胞(MDSC)を単球系MDSCおよび顆粒球系MDSCのサブセットに分けて解析を行った。コントロールとして、正常肺からリンパ球を分離し、同様に解析を行った。 その結果、第1例目の解析においては、正常肺では顆粒球の64.4%が顆粒球系MDSC、単球の53.8%が単球系MDSCであったが、癌部では腫瘍内浸潤顆粒球の51.2%が顆粒球系MDSC、腫瘍内浸潤単球の4.15%が単球系MDSCであった。癌部では浸潤単球における単球系MDSCの割合が低下していた。 第2例目の解析においては、癌部では腫瘍内浸潤顆粒球の21.0%が顆粒球系MDSC、腫瘍内浸潤単球の33.3%が単球系MDSCであった。 平成28年度は、マウス中皮腫モデルを作成し、マウス胸水中に含まれるリンパ球の解析を行う事を目的とした。マウスに中皮腫細胞株AB12を接種し、経時的に犠牲死させ、腫瘍の発育、胸水の貯留経過を観察したところ、接種後約10日目に胸腔内が胸水で満たされる事を確認した。胸水中よりリンパ球を分離し、フローサイトメトリーにてMDSCの解析を行ったが、MDSCがごく少量であったため、十分な解析を行う事ができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト肺癌腫瘍からの腫瘍内浸潤リンパ球の分離・解析を行う実験系を確立した。ヒト肺癌腫瘍内浸潤リンパ球のうち、ミエロイド由来抑制細胞(MDSC)を、顆粒球系MDSCと単球系MDSCの二つのサブセットに分けて解析し、正常肺との比較を行うことができた。しかし、悪性胸膜中皮腫に対して化学療法を行わずに手術を施行した患者数が少なく、中皮腫患者からのMDSC分離を試みる事はできなかった。 また、マウスの実験においては、マウス悪性胸膜中皮腫モデルを作成し、経時的に胸腔内を観察し、腫瘍、胸水貯留の経過を観察する事ができた。さらに、胸水中のリンパ球を分離し、フローサイトメトリーを行う事ができたが、MDSCの同定、解析を行う事ができなかった。これは、MDSCの絶対数が少ないためと、表面抗原の染色、解析が難しいことが原因であったためと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト肺癌、悪性胸膜中皮腫の胸水、腫瘍における腫瘍内浸潤リンパ球、ミエロイド抑制細胞の表面抗原解析を進め、臨床病理学的因子との関連を検討する。特に、中皮腫患者に対しては、化学療法を担当する内科と連携し、化学療法施行前の胸水ドレナージをする際に、胸水からのリンパ球分離を試みる予定である。 マウス中皮腫モデルの解析においては、胸水および腫瘍からのリンパ球の分離方法を改良することによって、MDSCの同定を試みる予定である。
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