2014 Fiscal Year Research-status Report
GSK3βを分子標的とする神経膠芽腫治療の基礎基盤の構築
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26861142
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮下 勝吉 金沢大学, 医学系, 助教 (80624874)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グリオブラストーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
当科ではdrug repositioning としてGSK3βを阻害する既存医薬品を使用した臨床試験を行っている。今回、臨床試験に使用している4種類の医薬品の膠芽腫細胞に対する浸潤抑制効果を、in vitroおよびin vivoで検証した。GSK3β阻害作用を有するシメチジン、炭酸リチウム、オランザピン、バルプロ酸を日常臨床で適用される血中濃度を基準に膠芽腫細胞株の培養液に単剤または併用で添加した。In vivoでは遺伝子変異を加えた神経幹細胞移植による膠芽腫マウスモデルに対して各薬剤を連日経口投与し、14日後に脳組織を摘出した。その結果、4種類すべての薬剤がin vitroおよびin vivoにおいてGSK3βの基質であるGSのリン酸化を抑制した。In vitroでは濃度依存性に細胞株の遊走・浸潤を抑制し、併用することでMMP-2の発現および活性化が低下した。膠芽腫マウスモデルにおいては4剤いずれも単独投与でsatellite lesionが減少、Nestin陽性細胞数が減少した。GSK3β阻害医薬品はdrug repositioningとして有用で、膠芽腫の遊走・浸潤を抑制することが示され、そのメカニズムとして膠芽腫の幹細胞性低下が示唆された。 また、当科で生検または手術を行った初発膠芽腫患者57例に関しての摘出検体を用いて活性化型GSK3βの免疫染色により高発現群と低発現群に分類し、両群のprogression-free survival(PFS)と、overall survival(OS)を比較したところ、活性化型GSK3β高発現群は低発現群と比較してPFS、OSはいずれも不良であった(p < 0.05)。GSK3βの活性化は膠芽腫患者の予後不良因子であり、膠芽腫の治療標的となることが示唆された。これらの結果は、日本脳神経外科学会総会ならびに日本脳腫瘍学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GSK3β阻害効果のある既存医薬品の神経膠芽腫細胞に対する浸潤・遊走抑制効果をin vitro、in vivoにおいて証明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス脳腫瘍モデルを用い、GSK3β阻害効果を有する既存医薬品を併用投与した際の腫瘍浸潤抑制効果を検証する。また、temozolomideと放射線療法との併用効果についても検証する予定である。
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Causes of Carryover |
物品費が予測よりも少なかったことが原因と考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の研究予定では、マウス脳腫瘍モデルを使用するため、そのための費用にあてる。
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