2017 Fiscal Year Research-status Report
脳脊髄液漏出症における神経放射線画像の解析および診断精度向上への応用
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26861158
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
堀田 祥史 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80721547)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳脊髄液漏出症 / 脳脊髄液減少症 / 低髄液圧症 / 画像診断 / ブラッドパッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の目標は、引き続き各種検査を行い症例のデータ収集を行うことと、これまでの成果を日本脳神経外科学会総会で発表をすることであった。 脳脊髄液漏出症の診断に用いられている、「脳脊髄液漏出症の画像判定基準・画像診断基準」に基づいて得られたデータは本年度は6例あり、これまでの合計は25例となった。また当該疾患に関する外来受診者も12例で、その半数に一連の検査を実施したことになる。検査に伴う有害事象はみられなかった。検査を実施した中で厚生労働省画像診断基準に合致して、新たに脳脊髄液漏出症または低髄液圧症と確定診断された症例は2例だった。これで脳脊髄液漏出症または低髄液圧症と診断した症例は、科研費交付以前の分と合計して8例となった。 本年度に「硬膜外自家血注入療法(通称:ブラッドパッチ)」を新規に実施した症例はなかった。上述の新規の2例(1例は脳脊髄液漏出症および低髄液圧症の診断、もう1例は脳脊髄液漏出症の診断)はいずれも経過中に自然軽快を示したため、保存的加療でともに治癒した。この2症例の症状経過ならびに検査時と自然治癒後の画像データを得られたのは本研究において貴重なものであった。また昨年度にブラッドパッチを実施した2症例についてはいずれも症状は治癒し、画像所見もきれいに改善していた。治療後1年が経過したが、再発なく良好な経過をたどっている。 当該疾患は従来言われていたよりもかなり希少であるが、引き続きの診療・検査・治療を継続していく方針である。 また2017年10月に開催された日本脳神経外科学会第76回学術総会で、「当院で診断・治療を行った脳脊髄液漏出症と低髄液圧症について」の演題名で、昨年度までのブラッドパッチを実施した6例について画像所見や治療後の経過等、詳細な報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
厚生労働省画像診断基準に合致して脳脊髄液漏出症または低髄液圧症と診断した症例は、科研費交付以前からのものと合わせてここまでで8例となった。これは当初の予測よりも大幅に少ない数字ではあるが、本研究が進むにつれて実際の患者数は従来の報告よりもかなり少ないことが判明してきたので、特別進捗が遅れているわけではないと考えている。 研究代表者は2012年10月より当該疾患の診療に取り組んでおり、これまでの検査症例数は47例、うち脳脊髄液漏出症の確定診断となったものは3例、低髄液圧症の確定診断となったものは2例、両者ともに認められたものが3例となった。また「硬膜外自家血注入療法 (通称:ブラッドパッチ)」においては脳脊髄液漏出症および低髄液圧症の症例を含めて、11例に合計16回実施してきた。本研究の目的である脳脊髄液漏出症例は現在のところ5例であるが、希少疾患であることを考えれば妥当な数だと考えている。 本研究は「脳脊髄液漏出症の画像判定基準・画像診断基準」に完全に則った検査・診断を行っているという特徴がある。その意味では非診断例(脳脊髄液漏出症または低髄液圧症が否定されたされた症例)も含めて一連の検査データじたいは他施設よりも多いほうだと考えている。 以上の理由より、現在までの進捗状況を上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き当該疾患についての社会啓蒙を行い、認知度の向上に努めていくのはこれまでと同様である。また平成28年度より「硬膜外自家血注入療法(通称:ブラッドパッチ)」が保険適応になったことで、当施設で検査・治療を希望される患者が増加することが期待される。 さらに検査結果の画像解析だけでなく、治療である「硬膜外自家血注入療法(通称:ブラッドパッチ)」後の検査画像にも応用して、治療効果や予後の予測などができるかどうかというところにも広げていければと考えている。 これまでの検査症例をまとめて、脳脊髄液漏出症ならびに低髄液圧症の診断精度を向上させる画像所見や参考所見について検討を行い、学会等で報告する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費については予定通り日本脳神経外科学会第76回学術総会に参加した分を支出した。他に参加を予定していた学会には都合がつかず(脳脊髄液減少症のセッションが無かった等)、参加しなかったため、その分については未使用で残った。物品費については当初の予定よりも支出が少なかった。モバイルPCと統計処理ソフトの購入を予定していたが、どちらも現在使用中のもので対応できたため、あえて本年度は購入しなかった。 (使用計画) 物品に関してはモバイルPCの購入を考えている。旅費に関しては日本脳神経外科学会学術総会、日本脳神経外傷学会、日本脳神経CI学会総会へ参加する予定である。
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