2014 Fiscal Year Research-status Report
脳微小循環障害時の血栓形成におけるangiotensinの役割についての検討
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26861162
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
丸山 元 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (00646680)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | AT1受容体 / 脳微小循環 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー照射によるマウス脳微小血管への血栓形成に及ぼすangiotensin Ⅱ type 1(AT1)受容体の影響を生体用蛍光顕微鏡を用いて検討した。野生型C57BL/6Jマウス(control群、n=10)、AT1受容体ノックアウトマウス(AT1KO群、n=8)を使用し、抱水クロラールで腹腔内麻酔した。マウスの頭部を固定後にドリルで頭頂部にcranial windowを作成し、carboxylfluorescein succinimidylesterを静脈内投与して血小板を標識した。血栓作成レーザー装置(TS-KL/S2、照射光源;DPSSレーザー、波長532nm、対物レンズ10倍、1000mA、9.8mW)を用いて脳軟膜動脈に4秒間レーザー照射し、血栓形成過程を生体用蛍光顕微鏡を用いてをリアルタイム直視下で観察した。レーザー照射による脳軟膜動脈の完全閉塞率は、control群では62%(18/29血管)、AT1KO群では43%(12/28血管)であり、AT1KO群で有意に低率であった(p=0.037)。また、レーザー照射30分後の血栓面積は、control群では345±226μ㎡、AT1KO群では183±122μ㎡であり、AT1KO群で有意に小さかった(p=0.007)。血管内皮細胞や血小板にはAT1受容体が存在しており、AT1受容体が刺激されると一酸化窒素の産生減少を介してプロスタサイクリンの合成抑制やトロンボキサンA2の産生増加が誘導され、血小板の凝集が促進すると考えられている。本研究において、AT1受容体ノックアウトマウスでは通常型のマウスよりも血管内皮傷害時の血栓形成が抑制されており、AT1受容体の血栓形成に関与する働きの一端を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究計画では、野生型C57BL/6Jマウス、angiotensin Ⅱ type 1(AT1)受容体ノックアウトマウス、angiotensin Ⅱ type 2(AT2)受容体ノックアウトマウスの血栓形成過程を観察する予定であった。野生型C57BL/6JマウスおよびAT1受容体ノックアウトマウスについては、生体用蛍光顕微鏡を用いた血栓形成過程の観察は終了しており、完全閉塞率やレーザー照射30分後の血栓面積などを評価済である。しかし、AT2受容体ノックアウトマウスについては現在も研究途中であり、当初の計画よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは現在実施しているangiotensin Ⅱ type 2(AT2)受容体ノックアウトマウスを用いた血栓形成過程の観察を終了させ、野生型C57BL/6Jマウスやangiotensin Ⅱ type 1(AT1)受容体ノックアウトマウスとの血栓形成の違いについて検討する。それが終わり次第、当初の研究計画に従い平成27年度に予定している内容に着手する。具体的には各種マウスの脳から組織標本を作成し、血管内皮の形態変化などについて電子顕微鏡的観察を行う。そして、研究成果について学会発表や論文発表により発信することを目標とする。
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Causes of Carryover |
平成26年度に実施予定の研究の一部については現在も継続中であり、消耗品等の物品購入時期が平成27年度に持ち越したものがあるため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の研究経費として物品費、旅費、その他を予定している。物品費については各種試薬(血小板標識試薬、抗体・免疫染色用試薬)、組織固定液、組織処理・切片作成用器具、DNA抽出・増幅に使用する物品などを購入予定である。現段階では1品又は1組若しくは1式の価格が500,000円を超える物品の購入は予定していない。また、平成27年度は本研究の最終年度であり、研究成果を発信することを目標としている。したがって、物品費のほかに学会発表のための旅費や外語論文の英文校正費としての使用を予定している。
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