2014 Fiscal Year Research-status Report
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26861168
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
サンペトラ オルテア 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (50571113)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞は腫瘍再発の責任細胞として知られている。再発率が高く、生存期間が2年に満たない膠芽腫では、その幹細胞がDNA損傷修復能、薬剤排出能とも高いため、現行の治療ではそれらを根絶することが不可能である。申請者はこれまでの研究で、膠芽腫幹細胞(Glioma stem cells:GSC)が二つのエネルギー産生経路を利用することができ、それらの代謝経路が正常脳・腫瘍組織の中でも極めて特徴的であることを見出した。さらに、それぞれの代謝経路を利用するGSCのモデル細胞の樹立に成功した。本研究ではGSCの代謝特性の分子基盤を詳細に解析し、膠芽腫幹細胞のエネルギー産生を規定し、治療標的となりうる代謝関連因子を同定することを目標としている。
初年度の平成26年度では、HRasV12-dsRED発現マウスGSCよりエネルギー代謝経路の異なる分画をフローサイトメトリーにて分取する方法を確立した。酸化ストレスマーカー及び代謝産物の蛍光標識類縁体によるソーティングを行った場合、増殖速度の違いに伴う代謝速度の差異は認められたが、代謝経路の違いは認められなかった。一方、細胞内酸素化状態を反映するマーカーによるソーティングでは代謝経路の異なる分画の単離に成功した。ソーティングにて分取・樹立したGSC分画は糖消費、乳酸産生などの細胞外代謝産物フラックスが有意に異なっていた。また、GSC分画をマウスの脳内に移植した際、腫瘍形成能、血管新生にも有意差が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では膠芽腫幹細胞の代謝特性を解明すると同時に、エネルギー産出経路の規定因子を同定することを最終目標としています。
本年度ではまず、培養中のマウス膠芽腫幹細胞の代謝経路の違いを簡便に検出できる方法を確立した。 また、本年度は具体的な目標であった、エネルギー代謝経路、腫瘍形成能、悪性度の異なるGSC分画の樹立に成功した。
以降の研究では同様の方法を用いることによって、ヒト膠芽腫幹細胞からの代謝経路別分画の樹立が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に確立したソーティング法を用いて、ヒト膠芽腫由来のGSCからも代謝経路、腫瘍形成能の異なる分画を樹立する。代謝経路、悪性度の規定因子を同定するため、樹立したマウスGSC2種類、ヒトGSC2種類からRNAを抽出し、マイクロアレイ用のサンプルを調整する。マイクロアレイ解析後、特定のパスウェイに関連した遺伝子群が抽出可能なgene set enrichment analysis(GSEA)法を用いて、各々の分画において発現が他細胞群より3倍以上変動している代謝関連遺伝子を選定する。次に各分画より細胞内代謝産物を抽出・固定し、CE-TOFMSを用いたメタボローム解析を行い、GSCにおいて細胞内畜産量が特異的に増加・低下しているメタボライトを探索する。最後に、マイクロアレイで同定した遺伝子の中からさらに、CE-TOFMS解析で特定したメタボライトを制御する遺伝子を選び、GSC代謝の制御因子候補とする。同定した因子について阻害剤、遺伝子改変操作による機能阻害実験を行い、GSCの代謝、生存、腫瘍形成能への影響を評価する。 さらに、マウスの病理標本・髄液・血液サンプルの定性的・定量的解析を行い、同定した因子がGSCのバイオマーカーとして適しているかどうか検証する。有用性の高いものについてはPETトレーサを作成し、マウスの脳内に形成させた腫瘍のイメージングを行い、その実用性を評価する。 最後に、動物モデルを用いて、同定した因子に対する阻害剤を投与する実験を行う。GSCを定位的にマウスの脳内に移植し、腫瘍サイズの推移及びマウスの生存期間を測定し、阻害剤の効果を評価する。
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