2014 Fiscal Year Research-status Report
脊髄後角における神経ステロイドによる痛覚伝達制御の解明
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26861224
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山本 豪 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (40710463)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | デヒドロエピアンドロステロンサルフェート / シグマ1受容体 / 痛覚過敏 / 神経ステロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)をラットの脊髄くも膜下に投与したところ、機械刺激に対する疼痛閾値が一過性に低下したことから、DHEASには脊髄において痛覚過敏作用があると考えられた。 次にin vitroパッチクランプ記録を用いた電気生理学的実験を行った。その結果、DHEASはラット脊髄後角第Ⅱ層ニューロンにおいて、微小興奮性シナプス後電流の頻度を増加させ、振幅を増大させること、微小抑制性シナプス後電流の頻度を減少させることを明らかにした。この結果を受けさらなる検討を行った。DHEASとBD1047(シグマ1受容体アンタゴニスト)を同時灌流投与したところ、DHEASによる興奮性シナプス伝達への作用が抑制されたことから、シグマ1受容体がDHEASの作用に関係していると考えられた。NMDA灌流投与による内向き電流がDHEASによって増大したことから、シナプス後のNMDA受容体への作用があると考えられた。AMPA灌流投与による内向き電流は、DHEASによって変化しなかったことからシナプス後のAMPA受容体への作用はないと考えられた。神経根を電気刺激することで得られる誘発性興奮性シナプス後電流は、C線維・Aδ線維刺激ともDHEAS灌流投与では変化しなかったことから、一次知覚神経終末への作用はないと考えられた。 これらの結果よりDHESは脊髄後角において、興奮性シナプス伝達を増強し、抑制性シナプス伝達を抑制することで、脊髄の痛覚伝達を増強し痛覚過敏を引き起こすと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パッチクランプ法を用いた電気生理学的実験は、興奮性シナプス伝達への作用についてはおおよそ終わった。抑制性シナプス伝達への作用の詳細についてはこれからさらに検討が必要である。 免疫学的実験は、まだサンプル数は十分でないが、pERKについてはウエスタン法を用いた検討を始めている。今後サンプル数増加と他のMAPKへの作用についての検討を行う予定である。 神経因性疼痛モデルラットを用いた検討については、モデルラット作成法の習得をし、今後実験を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫組織学的実験においては、神経ステロイドが作用するニューロンは脊髄後角のどの層に存在しているかを、神経興奮の指標としてpERK及びpCREBといったリン酸化タンパクを用いて検討する。また、神経ステロイドにより発現量が変化する細胞内シグナル伝達分子はなにかをWestern blottingにより定量的に検討し、発現量に差が見られた分子に関しては免疫組織学的に局在を検討する。 電気生理学的実験においては、神経ステロイドの作用は細胞膜に存在するどの受容体やイオンチャネルを介しているのか、特にシグマ1受容体との関連を検討するため、シグマ1受容体拮抗薬の灌流投与によるEPSC、IPSCへの修飾を検討する。 最後に正常ラットと慢性疼痛モデルラットにおいて上記の結果に違いはあるかを検討する。
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Causes of Carryover |
当初は電気生理学的実験と免疫組織学的実験を平行して行う予定であったが、電気生理学的実験を優先して行ったため、免疫組織学的実験に必要な物品をあまり購入しなかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は免疫組織学的実験を行うため、それに必要な物品を購入することで次年度使用額は使用する予定である。
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