2014 Fiscal Year Research-status Report
発達期および老年期の脳内神経伝達からみた吸入麻酔薬の影響とその解析
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26861249
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
菅澤 佑介 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80459114)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 吸入麻酔薬 / 脳内神経伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
吸入麻酔薬は今日まで広く全身麻酔に使用されてきたが、高齢者における全身麻酔後の認知機能障害をはじめ、小児期の麻酔曝露が脳の発達に影響を与え、学習能力低下や行動異常を引き起こす可能性が示唆されたため、今や公衆衛生学的にも看過出来ない問題として関心が高まっている。今回、神経ネットワーク解析を主軸として、遺伝子工学的研究仕法に加え、細胞内シグナル伝達物質の定量化という生化学的仕法と、Whole-cell Patch-clamp法を中心とした電気生理学的仕法を導入し、発達期および老化モデルマウスの脳に対して、吸入麻酔薬曝露が神経伝達物質放出機構に与える影響について検討した。近年、加齢に伴う脳機能障害に髄液クリアランスの低下が関与している可能性が示唆されており、これにより脳におけるベータアミロイドなどの有害物質排泄が障害され、認知機能障害の一因になりうると考えられている。この髄液クリアランス低下には、加齢によるアストロサイトのLRG1発現の増加が関与している可能性があり、吸入麻酔薬が老化モデルマウスの脳において電気生理学的にどのような影響を与え、また髄液クリアランスについても変化をもたらすかを検討している。LRG1過剰発現トランスジェニックマウスは重度の運動失調を呈し、形態学的には海馬及び小脳の形成異常を認めている。このことはLRG1が脳の老化のみならず、脳の発達にも重要な役割を演じている可能性を示している。本研究ではCre-loxPシステムを用いたアストロサイトへの特異的LRG1遺伝子導入を行なったLRG1トランスジェニックマウスを老化モデルとして用い、老化に伴う認知機能障害にあたえる吸入麻酔薬の影響を、認知・記憶に重要な海馬において電気生理学的および組織学的検索を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験を開始し順調にデータを得ることができているが、高度な実験手技に関してはまだ精度が足りない部分もある。継続的に実験を行いながらデータを蓄積し、実験手技にも習熟する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
神経細胞間の情報伝達はシナプスを介するネットワークが主要な機能構造であると考えられていたが、徐々にシナプス領域外に存在する受容体の機能と特性が明らかとなり、それまで脇役であったこの領域外受容体が脳機能調節に重要な役割を担うことが理解されてきた。なかでもシナプス領域外GABA受容体はGABAに対する高い親和性と緩慢な脱感作特性から、細胞周囲のGABA濃度センサーとして働き、持続的な電流(Tonic current)を提供している。我々もこれまでの研究で、吸入麻酔薬(セボフルラン)の領域外GABA受容体に対する強力な作用を報告してきた。即ち線条体細胞ではセボフルランがTonic GABA電流を増大させた。さらにその大きさは生後7日(P7)から28日(P28)までは日齢とともに増加した。また細胞膜容量(τ)で補正すると、日齢との間に強い相関関係がみられ、この時期のTonic GABA電流の増大が、吸入麻酔薬の『興奮作用』と関連してその後の脳発達に影響を与える可能性が示唆された。今後は脳の成長発達課程におけるGABA受容体サブユニットの変化をも含め解析を進める計画である。さらに老化モデルマウスに対する同様の実験を行い、老化現象とこの領域外GABA受容体との関連性の検討を加えたい。
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Causes of Carryover |
既に購入済みであった試薬・抗体や測定キットを使用して実験を行うことが可能であったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題を遂行するのに必要な機器は共同研究施設内に設置され使用可能であるため設備備品の購入予定はない。消耗品費としては関連試薬・抗体や各種プロテインキナーゼ測定キットの費用。マウスは年間あたり120匹として計上した。旅費として国内出張は日本麻酔科学会年次学術集会等への参加を、国外出張は米国麻酔科学会年次学術集会等への参加を予定している。その他、論文発表のために必要な英文校閲費用、論文別刷印刷費用を計上した。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] 高齢者の腰痛に対する疎経活血湯と十全大補湯の有用性2014
Author(s)
光畑裕正, 松本園子, 原 厚子, 飯田史絵, 菅澤佑介, 榎本達也, 今井美奈, 小西るり子, 松岡芙美, 酒井大輔, 中村かんな
Organizer
第27 回日本疼痛漢方研究会学術集会
Place of Presentation
東京コンファレンスセンター・品川
Year and Date
2014-07-05