2015 Fiscal Year Research-status Report
発達期および老年期の脳内神経伝達からみた吸入麻酔薬の影響とその解析
Project/Area Number |
26861249
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
菅澤 佑介 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80459114)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 吸入麻酔薬 / 脳内神経伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、発達脳に対する麻酔薬の影響が懸念され、社会的にもその関心が高まっている。今回我々は電気生理学的手法を用い、日齢に伴う発達過程への吸入麻酔薬:sevofluraneの影響を線条体cholinergic interneuronの過分極活性化型陽イオン電流(Ih)の変化により分析を行った。Ihは生体において様々な役割を担い、心臓組織や中枢・末梢神経で確認され、不整脈やてんかん、神経障害性疼痛との関連も指摘されており、近年注目を集めている。本研究においてはマウス線条体cholinergic interneuronにおけるIhを検出し、その日齢による絶対値の変化やsevoflurane投与によりどのような変化をきたすかを観察し検討した。実験方法としては日齢(P)3~35日のマウス脳スライスを作成し、大脳基底核線条体:cholinergic interneuronからwhole-cell patch clamp法を用いて細胞内電流を測定する。その後電圧は0mV固定の上、人工脳脊髄液に灌流し、sevofluraneは灌流液中に添加する。さらに各種拮抗薬を添加し、その変化を観察・分析して検討する。これまでの結果ではP7~28で線条体cholinergic interneuronにおいてIhが記録され、日齢を経るに従い増加をみとめた。また全日齢を通じてsevofluraneの添加によりIhの減少がみられたが、その度合いに日齢間で差をみとめなかった。さらにsevofluraneはIhが関与するcholinergic interneuronの自発発火頻度に影響を与えることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調にデータを蓄積し現在論文投稿準備中である。更に今後の実験計画の見通しも立っている。実験の精度も向上し再現性のある実験系が確立されつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
線条体cholinergic interneuronは自発的な発火をみとめ、Ihの他にも、電位依存性カルシウムチャネルおよびATP感受性カリウムチャネルによって制御される電流は中枢神経系のpacemakingにおいて重要な役割を担っている。今後は発達期における電位依存性カルシウムチャネルおよびATP感受性カリウムチャネルに対するsevofluraneの影響に着目し実験を進める予定である。そしてマウスにおける吸入麻酔薬の薬理効果および日齢変化に対する影響を分析することで、ヒト臨床での安全な麻酔を提供することを最終目標としたい。
|
Causes of Carryover |
既に購入済みであった試薬・抗体や測定キットを使用して実験を行うことが一部可能であったため次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後計画している実験で使用する試薬購入のための費用とする。
|
Research Products
(9 results)