2014 Fiscal Year Research-status Report
冷痛覚過敏の治療標的としてのTRPV3チャネル機能解析
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26861253
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
丸山 基世 日本医科大学, 医学部, 助教 (60709757)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / TRP channel |
Outline of Annual Research Achievements |
冷痛覚過敏はオキサリプラチン等の抗がん薬の使用による末梢神経障害を呈する患者において高頻度で発現し、治療ニーズが高いにも関わらず未だ有効な治療手段は全く確立されていないのが現状である。近年、Transient receptor potential (TRP)チャネルが温度感覚や痛覚において重要な役割を担っていることが明らかにされてきている。TRPV3は33℃以上の温度刺激やオレガノ等の様々な天然物によって活性化され、痛みを伴わない温かい感覚を伝えると考えられている。しがしながらTRPV3のノックアウトマウスは侵害的な高温刺激への反応に欠陥を示すことが報告されており、痛覚にも寄与する可能性が示唆されている。我々はTRPV3 チャネルの機能獲得型変異を有するラット(WBN/Kob-Ht)において、侵害性の冷刺激による痛みが亢進していることを見出した。 TRPV3は皮膚角質細胞において一貫して高い発現が認められているが、痛みの情報を中枢へと伝達する一次感覚神経における発現に関しては議論がある。従って、本年度はTRPV3の発現解析を行い、TRPV3が一次感覚神経だけでなく、脊髄や脳の各部位で発現していることを示した。また、TRPV3に特異的に作用するアゴニスト及びアンタゴニストが利用できないため、本研究ではWBN/Kob-Htラットを用いて、痛覚に対するTRPV3の関与を行動学的に評価した。TRPV3変異ラットの機械刺激に対する痛覚閾値は野生型ラットと同等であったが、侵害的な熱刺激及び冷刺激に対する痛覚行動が亢進していた。以上より、TRPV3は熱刺激に対してだけでなく冷刺激に対する痛覚にも寄与している可能性が示唆され、TRPV3の冷痛覚に対する機能解析は温度感覚の分子機構の解明に寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TRPV3を発現する神経の性質は全く調べられていない上に、一次感覚神経におけるTRPV3の発現自体に議論がある。本年度はTRPV3が一次感覚神経だけでなく、脊髄や脳の一部で発現していることを示した。また、TRPV3遺伝子の機能獲得型変異ラットを用いて、TRPV3が冷痛覚に関与する可能性を行動レベルで明らかにした。現在は、TRPV3発現神経の詳細な解析を行っているところであり、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
一次感覚神経は主に痛みを伝達する神経細胞と、触覚を伝達する神経細胞が混在しており、TRPV3を発現する神経の分布を明らかにすることはTRPV3陽性神経の特性を調べる上で非常に重要である。次年度は一次感覚神経におけるTRPV3の発現分布ならびに特性を明らかにする。また、TRPV3が冷痛覚に関与することが強く示唆されたため、冷痛覚へ寄与するメカニズムについて詳細に検討する予定である。
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Research Products
(2 results)