2014 Fiscal Year Research-status Report
非侵襲的眼底血流測定による妊娠高血圧症候群の早期診断法の開発
Project/Area Number |
26861306
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
倉片 三千代 東北大学, 大学病院, 助教 (10722580)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 産科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年3月までに、東北大学病院産科にて周産期管理中の妊婦59名より、妊娠初期12週、妊娠中期20週、妊娠後期28~30週、妊娠末期34~36週、分娩後1か月の合計5回、LSFG(laser speckle flowgraphy)を施行し、臨床データ収集を実施した。対象症例の内訳は、正常妊娠症例45名、妊娠高血圧症候群8名、妊娠糖尿病1名、下肢静脈血栓症1名、常位胎盤早期剥離1名、転居などを理由に研究参加を中止した症例3名である。 LSFGでは、眼底血流流速をMean Blur Rate(MBR)として表し、この波形解析によって血管抵抗の指標となるBlowout score(BOS)などの測定が可能である。今回正常妊娠女性(n=45)の眼底血流を縦断的に観察し、妊娠中の網膜血管における生理的な変化の解析を行った。BOSは妊娠経過と共に有意な低下傾向を認め、妊娠後期以降の眼底網膜血管の血流量の増加や血管抵抗の低下を示唆していると考えられた。これは、妊娠中の母体循環の変化を、計測可能な細小血管である眼底網膜血管において非侵襲的に捕えたものと考えられる。 また、妊娠高血圧症候群症例においては、正常症例と比較して、妊娠中期より血管抵抗の上昇を示した症例を認めた。この変化は、血圧の上昇より早い段階で捕えられており、妊娠高血圧症候群症例においては、高血圧の発症以前に細小血管レベルではなんらかの変化が起きていることを示している。このことから、LSFGと従来の臨床検査結果を統合的に解析することで、より早期の診断・予防が可能となることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
眼科との密な連携によってLSFGのデータ取得、検査方法は確立され、安定した結果が得られている。しかしながら、血圧データ・採血データ(PlGF/sflt-1)・超音波検査・臨床背景データとの関連解析は不十分であるため、今後鋭意推進する予定である。また、正常妊娠症例の解析は進んだが、妊娠高血圧症候群などの合併症症例との症例対照研究を進めるため、より多くの症例登録が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は症例対照研究を進めるため、さらなる症例登録とデータ収集を実施する。現在の問題点としては、対象妊婦の年齢層が一般集団より高いことがあげられる。LSFGのパラメーターは、年齢と相関するものが多いため、今後は、より一般集団に近い対象症例の登録を実施していく予定である。また、データの統計解析を進めるため、より専門性の高い研究協力者の参画を予定している。
|
Causes of Carryover |
平成26年10月から平成27年3月まで育児休業取得により、研究を一時中断した。そのため、次年度使用額として668,792円が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は症例対照研究を進めるため、さらなる症例登録とデータ収集を行う。また、データの統計解析を進める。
|