2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒト卵巣組織の異種移植系を用いた卵子供給システムの構築とaging研究への展開
Project/Area Number |
26861307
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
椛嶋 克哉 秋田大学, 医学部, その他 (30615422)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 卵子 / 加齢 / 紡錘体 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の我が国の晩婚化、晩産化の傾向に伴い、卵子の加齢による妊孕性の低下は、現在の生殖医学において最も大きな問題の一つとなっている。そこで、卵子の加齢性変化として重要と考えられる紡錘体機能およびミトコンドリア機能について、以下の検討を行った。 (1)卵子における紡錘体の蛍光イメージングと画像解析 染色体分配を担う紡錘体の蛍光イメージングについて、ヒト卵子を用いた試験に先立ち、動物卵子を用いた検討を行った。実験動物としてはマウスが代表的ではあるが、げっ歯類の卵子における紡錘体の形状は、他の動物種とは異なるいくつかの特徴を有する。そこで、マウスばかりでなく、紡錘体形状がよりヒトに近い家畜の卵子も用いて検討を行った。また、画像解析ソフト(ImageJ)用い、得られた蛍光写真の画像解析についても試みた。 マウス卵子の紡錘体はその極軸を細胞膜と平行に位置するのに対し、家畜卵子のそれは垂直に配置される。卵子の直径は、マウスが73.8±0.4 μmであるのに対し、家畜は116.8±1.4 μmと有意に大きかった(P<0.01)。一方、マウス卵子では家畜卵子に比べ2倍以上も大きい紡錘体を形成していた(22.3±0.4 μm vs. 9.8±0.3 μm,P<0.01)。そこで、紡錘体を構成する微小管の蛍光輝度を計測したところ、マウス卵子の紡錘体の値が有意に高く(38,384±2,117 vs. 6,788±786,P<0.01)、微小管が豊富に存在するものと考えられた。中心体関連タンパク質であるγチューブリンについても同様に蛍光観察、画像解析を行ったところ、マウス卵子の紡錘体の値が有意に高く(5,353±498 vs. 1,811±253,P<0.01)、このことが微小管の再編成を促進し、マウス卵子において巨大な紡錘体を形成する一因である可能性が示唆された。 (2)ミトコンドリア機能の解析
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスおよび家畜卵子における紡錘体構造の差異を蛍光輝度という客観的なデータをもって示すことに成功した。ヒト卵子は数が限られるため、ウェスタンブロットのような解析手法を用いることは現実的ではない。本手法はヒト卵子における紡錘体機能の加齢性変化について、形態的な解析ばかりでなく、半定量的な解析を行うことも可能とするものである。 ミトコンドリア機能の解析は、細胞呼吸活性測定装置(クリノ社)を用いて行った。ヒト卵子の測定に先立ち、卵子に比べ呼吸量の大きい胚盤胞を用いた。良好胚盤胞では、グレードの低い胚盤胞に比べ呼吸量が高い傾向がみられた。しかしながら、本装置は正確な測定のための手技習得に多大な時間を要することから安定的な結果を得ることが困難な面もみられ、測定結果の再現性については更なる検討が必要であると思われた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度検討および確立した手法を用い、ヒト卵子の解析を行う予定である。細胞呼吸活性測定装置については、操作性の向上した後継機器の開発が進んでいることから、新型の測定装置を用いることで問題への対応が期待できる。
|
Causes of Carryover |
実験スケジュールの変更により研究計画の一部を次年度に繰り越したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については繰り越した実験に使用する。本年度の使用額については研究計画に従って使用する。
|
Research Products
(2 results)