2014 Fiscal Year Research-status Report
婦人科悪性腫瘍患者における生殖細胞遺伝子変異のシークエンス解析
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26861342
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
飯塚 千祥 昭和大学, 医学部, 助教 (70465128)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腫瘍遺伝子 / 子宮体癌 / 卵巣癌 / 遺伝性腫瘍症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、家族歴、発症年齢、組織学的特徴などから遺伝性癌症候群が疑われる子宮体癌、子宮頸癌、卵巣癌患者を対象として、血液中のDNAを次世代シーケンサーで解析し、これまで明らかにされてきたLynch症候群や遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)を含めた遺伝性腫瘍に関連する94遺伝子について生殖細胞変異の有無を網羅的に調べています。変異遺伝子を特定することには以下のメリットがあると考えます。(1) 変異遺伝子ごとの癌発症リスク、発生する癌の種類およびその頻度が明確になる。(2) 癌患者本人(発端者)に対して、新たに罹患する可能性のある癌腫ごとにスクリーニングによる早期発見や予防を行うことができる。(3) 発端者の血縁家族に対して、遺伝子検査は特定の遺伝子のみ確認するため安価である。癌未発症の段階で定期的なスクリーニングを行い、可能であれば予防を行うことができる。(4) 変異遺伝子を標的とした、分子標的治療に応用することが可能である。 現在、上記婦人科悪性腫瘍と診断され、研究に参加の同意を得られた患者から血液サンプルを採取し、以下の手順を進めており、平成26年度の進行状況を示します。 ①サンプル収集:遺伝性腫瘍の割合が高いと予測される子宮体癌および卵巣癌罹患者の血液サンプルを33検体採取。今後も新規罹患者を含めてサンプル収集を継続。 ②サンプルからのDNA抽出:採取したサンプルからはDNAを抽出し、抽出したDNAを凍結保存している。サンプル回収後1~2日以内に速やかに実施。 ③DNAの次世代シーケンサーによる遺伝子解析:現在4検体まで実施。当初8~16サンプルを同時にシーケンス解析できると考えていたが、サンプル数が多いと検出できない検体があったため、少数ずつ分割して実施する必要があり、本年度および次年度にさらに解析数を増やして傾向を分析する予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子検査のため研究に同意いただけない場合もあり、当施設での全婦人科がん患者数で想定したほどのペースではサンプルが集まらない現状はありますが、生殖細胞変異を検出する研究のため既治療患者でもサンプルがとれるのでおおむね順調には収集できています。DNA抽出まではこれまでの研究でも経験の多い手技のため順調ですが、シーケンサーによる解析が難しく貴重な検体を無駄にしないように少数ずつ慎重に解析を進めています。当初は8~16サンプルを一度に解析できる予定でしたが、その数を実施するとエラーが起こりやすいため、少数ずつ(現状は4サンプル)慎重に解析しています。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方としては以下を予定しています。 ①サンプル収集:できるだけ多くのサンプルを収集できるよう継続して実施する。本研究対象が有する変異保有率は未確定である(一般的には全癌腫における遺伝性腫瘍の占める割合は約10%と考えられている)が、特に卵巣癌では遺伝性の占める割合が30%と推測されており、Linch症候群や遺伝性乳癌卵巣癌症候群も含めると本研究対象の子宮体癌、卵巣癌における遺伝性の含む割合は20~25%と推測でき、必要症例数が150~200となる。それにはサンプル収集がまだまだ不足なため、家族歴が濃厚な症例を周囲施設からも紹介いただけるよう働きかける必要がある。また、解析についても家族歴が濃厚な変異保有率が高い群とそうでない群を比較するなど、結果の解析のための統計手法についても、サンプル数が予定より少ない場合にも有用なデータが得られるよう検討する。 ②DNA抽出:サンプル回収後1~2日以内にDNAの抽出を行い凍結保存。 ③次世代シーケンサーによる解析:当初12検体ずつパネル解析ができる予定であったが、サンプル数が多いとエラーが起こりやすいことが判明したため4~5検体など少数ずつで解析を行わざるを得ない。熟練すれば解析数が増やせる可能性はあるが、当初より時間がかかっているため平成27年度から28年度は集めたサンプルのシーケンサー解析に時間的重点を置いて研究を進める必要がある。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンサー解析にかかる費用が支出の多くを占めますが、1回にシーケンサーを用いて行う解析サンプル数を、解析精度の問題から当初の予定より少数で実施しているため、解析に用いるパネルや試薬も少なくなりました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額分はやはり解析のパネルや試薬を購入するために使用する予定としています。次年度はより多くの解析を行えるように進めていく予定です。
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