2014 Fiscal Year Research-status Report
好酸球性鼻副鼻腔炎の病態形成におけるIL-33、IL-25、ILC2の役割
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26861371
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
戸嶋 一郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80567347)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 好酸球性副鼻腔炎 / IL-33 / ILC2 / 鼻茸 / IL-25 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の一つが、好酸球性副鼻腔炎などの難治性鼻副鼻腔疾患の病態形成におけるIL-33とILC2(type 2 innate lymphoid cell)の役割を明らかにすることである。 本年度の研究成果としては、ヒトの鼻茸や末梢血から分離したILC2は、IL-33とIL-2を加えることでIL-5やIL-13の産生が増加し、ILC2自身の細胞数も増加することが明らかになった。また鼻茸を伴わないヒトの鼻粘膜組織中と比べ、好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸組織中にILC2が増加していることも明らかになった。また培養した好酸球性副鼻腔炎の鼻茸上皮では、鼻茸を伴わないヒトの鼻粘膜上皮と比べ、環境抗原の刺激によりIL-33の分泌が増加することも明らかになった。以上より、好酸球性副鼻腔炎の病態においては、環境抗原の刺激により鼻粘膜上皮から産生されたIL-33が、ILC2を介してIL-5やIL-13の産生を増加させ、その結果組織中の好酸球や粘液(ムチン)産生を増加させて病態の難治化に関与していると考えた。IL-33とILC2を介した生体反応が、好酸球性副鼻腔炎の病態の難治化に関わっていることを明らかにしたことは、臨床的に重要な意味を持つと考えられる。 また、鼻副鼻腔疾患患者の末梢血中におけるILC2の割合を測定し、臨床データの中でILC2の増減と関連のある因子の解析も行った。その結果、末梢血中の好酸球が多いほど、末梢血中のILC2の割合は低い傾向にあることが明らかになった。この結果から、末梢血好酸球が過剰な病態においては、むしろ末梢血中のILC2は低下しており、末梢血レベルでは過剰な好酸球性炎症が抑制されている可能性があると考えた。このことは今まで報告されておらず、臨床的に重要な意味を持つと考えられる。 本研究の一部を、2015年第33回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会にて口演した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画のうち、ヒト検体からのILC2分離と疾患特異的な変化についてはある程度まとまった結果を出すことができ、培養鼻粘膜上皮からのIL-33,IL-25産生の検討についてはその一部を実施できた。さらに、平成27年度の研究実施計画のうち、分離したLC2をIL-33,IL-25で刺激しIL-5 ,IL-13産生を検討するという項目も実施することができた。 今までの研究結果を学会で発表することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
更なるデータの蓄積と解析を行い、学術論文として報告する。 鼻粘膜におけるIL-33,IL-25とその受容体、さらにILC2の局在と発現について検討する。 環境抗原の刺激による、培養鼻粘膜上皮からのIL-33やIL-25産生において、プロテアーゼ阻害薬や中和抗体などを用いて、鼻粘膜上皮からの放出機序を解析する。 好酸球性副鼻腔炎の病態を解明していくことで、難治性疾患である好酸球性副鼻腔炎にとっての有効な治療法を見つけていく。
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