2014 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌における局所免疫応答の解明と新規ワクチンの開発
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26861397
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
能美 希 大分大学, 医学部, 助教 (40468020)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 頭頸部癌 / 生体内ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは“がん微小環境”において抗腫瘍免疫と免疫寛容を調整するタンパクのひとつとしてmilk fat globule epidermal growth factor-8(MFG-E8)に注目した。本研究では頭頸部癌におけるMFG-E8の発現,分泌とその機能について解析し,将来的に新規ワクチンの候補となりうるか検討する。 1)頭頸部癌におけるMFG-E8の発現;頭頸部患者においてMFG-E8の発現を免疫染色で検討した。MFG-E8は腫瘍組織と一部の間質で発現がみられ、T分類,stagingとの関連性が示唆された。TregのマーカーであるFoxp3についてもMFG-E8の発現と相関していた。臨床病期との関連は明らかではなかった。5年生存率については有意差はなかったが、MFG-E8発現群で生存率は低い傾向にあった。前癌病変(白班症)や正常組織から得られた組織についても同様にMFG-E8の発現を検討すると前癌病変や正常組織では発現は見られなかった。さらに頭頸部癌細胞株をMFG-E8の発現をwestern-blot法にて検討したところ、細胞株で差はあるものの多くの細胞株で発現が見られた。 2)頭頸部癌におけるMFG-E8の分泌形態;頭頸部細胞株の蛍光免疫染色を行うと,MFG-E8は癌細胞より細胞内の顆粒として分泌されることが明らかとなった。またその分泌はシスプラチン添加後などストレス下において促進されることが示唆された。これらの顆粒がサイトカインとして分泌されるのか,あるいはexosomeのように小胞体として分泌されるのか,現在検討中である。 以上の結果からは、頭頸部癌においてMFG-E8が腫瘍細胞から分泌され、がん微小環境における局所の免疫寛容を誘導している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腫瘍組織、細胞株でのMFG-E8の発現等の研究はある程度進行しているが、頭頸部癌患者血清や末梢血を用いた研究の進行が遅れている。とくに頭頸部癌患者末梢血リンパ球と頭頸部癌細胞株との共培養による免疫応答の検討についてはサンプル採取、血球分離の段階で進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度進行が遅れていた頭頸部癌患者末梢血リンパ球と頭頸部癌細胞株との共培養による免疫応答の検討を継続する。網羅的解析に必要なmRNAおよびタンパクのサンプル採取方法についても見直しを行う。 加えて、MFG-E8発現ベクター,siRNAを頭頸部癌細胞株に導入し,培養上清中のMFG-E8の分泌増加を ELISA法で検討する。さらに,MFG-E8の抗アポトーシス効果を検討するため,これらのMFG-E8強制発現細胞株および発現抑制細胞株において,シスプラチン(0,1,2 mg/ml)に対する感受性の変化を検討する。感受性の評価についてはMTT assayで,アポトーシスの評価については,annexin VおよびPI染色を行いflowcytometryで,またCaspase-3/7活性をcolorimetric assayにて検討する。 さらに、MFG-E8は前癌病変では発現が見られないものの、頭頸部癌組織では発現が見られることに注目し、MFG-E8によるEMT誘導能についても検討する。頭頸部癌細胞にMFG-E8発現ベクター,siRNAを導入し,共焦点レーザー顕微鏡でEMTのマーカーであるE-cadherin,vimentinの発現を検討する。また,α,β integrinに対する抗体でブロックして,これらのタンパクの発現に変化が見られるか検討する。TwistやSnailなどの転写因子の発現についてもwestern-blot法で検討する。この結果,癌細胞からautocrineされるMFG-E8がEMTを誘導するかどうかを検討する。 これらの研究を系統的にすすめていくことで,MFG-E8が生体内ワクチンとして、頭頸部癌における新たな治療標的となりうるか検討する。
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