2014 Fiscal Year Research-status Report
微生物由来イオンチャネル遺伝子導入による網膜変性保護
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26861433
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
高橋 麻紀 岩手大学, 工学部, 研究員 (70714575)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クロライドチャネル / 視細胞保護 / アデノ随伴ウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外グルタミン酸濃度の過度な上昇が緑内障による網膜神経節細胞死を引き起こす要因の一つであることが知られている。グルタミン酸による神経細胞内へのCaイオン流入による膜電位の上昇が一つの要因であることを考えると、陰イオンの流入による膜電位の上昇緩和が神経保護をもたらす可能性がある。そこで本研究では、グルタミン酸で活性化されるGluClと光で活性化されるNpHRの2種類のクロライド(Cl)チャネルを利用し、これらのタンパク質をコードする遺伝子を、視細胞あるいは神経節細胞に導入し、変性に対する保護効果の検討を目的とした。 グルタミン酸毒性を示すと報告のある神経細胞様に分化したPC12細胞を用い、グルタミン酸添加により細胞死を誘導したが、顕著な細胞死は見られなかった。そこで、同様にグルタミン酸毒性を示すと報告のあるマウス海馬由来樹立細胞株であるHT22細胞で同様にグルタミン酸を添加した結果、細胞死を確認できた。 また、光感受性ClチャネルであるNpHR遺伝子の機能を調べるためにHEK293細胞へ導入し、パッチクランプ法により光刺激によるイオン電流を測定したが、それは極めて低いものであった。その要因はNpHRタンパク質の細胞膜への発現が低いためであった。そこで現在、細胞膜特異的に発現させるために遺伝子改変を進めている。 一方、緑内障とは別に視細胞に対するNpHRの保護効果を検討するため、視細胞特異的にClチャネル遺伝子を導入するための、AAVベクターの作製を行った。プロモーターには視細胞特異的なPhosphodiesterase(PDE)のプロモーターの一部分とinterphotoreceptor retinoid-binding protein(IRBP)を組み合わせた、視細胞特異的な発現を可能にするプロモーターを構築した。視細胞への導入効率を更に向上させるため、IRBPは3個連続し組み込みを行った。その結果、網膜下投与により、視細胞特異的に高い頻度で遺伝子導入を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線虫はGluCl-A、Bの2種類のClチャネルを有しており、各データベースの塩基配列(GenBank, Accession No.AY195802、AY195803)を参考に、コドンをヒトに最適化したGluClチャネル遺伝子をデザインした。この遺伝子を組み込んだベクターを作製し、PC12細胞に導入し、GluCl-A、Bの発現を確認した。その結果、GluCl-Bではわずかに顆粒状の発現が見られたが、タンパク質として細胞内で機能しないと考え、本研究では細胞質での発現が見られたGluCl-Aを用い、実験を進めることにした。 培養下において、グルタミン酸毒性による保護効果を検討するため、まず、ラット副腎髄質由来神経褐色細胞腫 (PC12細胞) を用いて、グルタミン酸を添加したが、顕著な細胞毒性は見られなかった。そこで、マウス海馬由来の樹立神経細胞株、HT22細胞を用いてグルタミン酸添加したところ、細胞死が確認できたため、今後はこの系を用いて実験を行う予定である。 また、光感受性ClチャネルであるNpHR遺伝子をHEK293細胞へ導入しタンパク質の発現を確認した結果、細胞膜への局在性が弱く、応答性が低いと考えられた。その機能をパッチクランプ法を用いて解析したが、膜電流は極めて低い事がわかった。従って、細胞膜特異的な局在をもたらす配列を挿入、変換する遺伝子改変を進めている。 今後、In Vivoの実験において、視細胞特異的にClチャネル遺伝子を導入するため、AAVベクターの作製を行った。プロモーターには視細胞特異的なPhosphodiesterase(PDE)のプロモーターの一部分とinterphotoreceptor retinoid-binding protein(IRBP)を組み合わせた。その結果、網膜下投与により視細胞特異的に高い頻度で遺伝子導入を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
グルタミン酸毒性に対して、保護効果を検討するため、当初PC12細胞を予定していたが、顕著な細胞毒性が見られなかったため、グルタミン酸毒性が確認できたHT22細胞で実験を行う。 NpHRについては、膜特異的発現のため遺伝子の改変を来年度行うことになった。遺伝子の改変が済み次第、細胞での発現を確認し、パッチクランプ法で膜電流の測定を行う。 また、3×IRBP-PDEプロモーター下にgluCl遺伝子もしくはNpHRを組み込み、視細胞変性に対する保護効果を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
NpHRについては、その機能について既に報告がある(Zhang F, et al., 2007, nature)。我々はパッチクランプ法を用いて、詳細に条件を検討したNpHRの機能を調べたが、やはり光応答性が極めて低い事が分かった。本年はこの検討に時間を要した為、当初の予定であった実験を次年度行う事となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
NpHRをタンパク質として発現させるためには遺伝子改変が必要となり、次年度は遺伝子合成等に予算を使用したいと考えている。また、GluCl-A遺伝子については、HT22細胞においてグルタミン酸毒性に対する保護効果を検討する実験、および動物を用いたin vivoでの実験を進める予定である。この細胞培養と動物実験のために予算を使用したいと考えている。
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